誤解されやすいメラビアンの法則とは?定義から円滑な組織でのコミュニケーションでの実践例まで

「人は見た目で判断する」と聞いたことはありませんか?

実は、この言葉の背後には、心理学者のアルバート・メラビアンが提唱した「メラビアンの法則」と呼ばれる法則が関係しています。

しかし、メラビアンの法則は、誤って解釈されることも多いため、注意が必要です。

法則の本質は、言語、聴覚、視覚の3つの情報が互いに矛盾なく一致しているかどうかにあります。

本記事では、メラビアンの法則の誤解しやすいポイントを解説し、円滑な組織コミュニケーションを実現するための実践例も紹介します。

目次

メラビアンの法則の概要

メラビアンの法則とは、言語情報、聴覚情報、視覚情報の重要度を示した法則です。 

メラビアンの法則を正しく実践するために、概要から誤解の部分まで見ていきましょう。

メラビアンの法則の定義

メラビアンの法則は、心理学者のアルバート・メラビアンが提唱した、情報伝達の割合に関する法則です。

メラビアンは、さまざまな実験を通して、人が相手に対して印象を形成する際に与える割合を以下のように導き出しました。

  • 視覚情報が55%
  • 聴覚情報が38%
  • 言語情報が7%

メラビアンの研究は、言語と非言語情報が矛盾する場合に、どちらが相手に与える影響が大きいかを検証しました。

その結果、言語情報よりも非言語情報の方が影響力が高いことが示されました。

しかし、メラビアンは、見た目が一番大切だと言っているわけではありません。

メラビアン自身も「言語情報、聴覚情報、視覚情報の3つの要素が互いに影響し合いながら、最終的な印象を形成する」としています。

実験結果

メラビアンの実験は、2つの主要な実験と、それらを補完するいくつかの追加実験から構成されています。

1つ目は、「maybe」という言葉の印象が、話者の声のトーンでどのように変化するかを検証しました。

結果的には、強い口調で話された「maybe」の方が、普通の口調で話された「maybe」よりも、説得力があることが示されました。

2つ目は、視覚情報、聴覚情報、言語情報がどのように相互作用するかの実験です。

被験者には、「好き」「嫌い」「普通」のいずれかを連想させる顔写真、声色、単語が提示されました。検証内容は、情報が一致している場合と一致していない場合の印象です。

実験の結果、一致している場合には、被験者はその情報に一致した印象を持つと判明しました。しかし、一致していない場合には、視覚情報が最も強い印象を与え、次に聴覚、最後に言語が影響を与えることが示されました。

3Vの法則

メラビアンの法則は、「3Vの法則」とも呼ばれています。

これは、メラビアンの法則を構成する3つの要素である視覚(Visual)、聴覚(Vocal)、言語(Verbal)の頭文字からそう呼ばれています。

3つの要素の具体例は、以下のとおりです。

項目概要具体例
視覚情報(Visual)目で見て分かる情報表情や服装、髪型、資料のデザインなど
聴覚情報(Vocal)耳で聞いて分かる情報声のトーンや話し方、声の大きさ、声質など
言語情報(Verbal)言葉の内容そのもの言葉遣いや話す速度など

大切なのは3つの情報をバランスよく伝えることです。

誤解して解釈し、「見た目だけ気を配ればいい」とならないように気を付けてください。

言語コミュニケーションと非言語コミュニケーション

コミュニケーションは、大きく分けると言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションに分類されます。

言語コミュニケーション言葉を使って情報を伝える(会話や文章など)
非言語コミュニケーション言葉以外の情報を使って情報を伝える(表情や声のトーン、身振り手振り、見た目など)

メラビアンの法則によると、非言語コミュニケーションが言語コミュニケーションよりも大きな影響を与えると言われています。

これは、人間が情報を処理する際に、視覚や聴覚などの非言語情報の方が、言語情報よりも早く、より多くの情報を受け取れるためです。

しかし、メラビアンの法則を誤解して、非言語コミュニケーションだけを重視してしまうと、逆効果になる可能性もあります。

大切なのは、両方の違いを理解して伝えることです。

例えば、褒められているのに仏頂面だとしたら、素直に喜べませんし、笑いながら怒られても、とまどってしまうでしょう。

人は両方から必要な情報を受け取っています。その点を理解し、普段のコミュニケーションに活かしていきましょう。

メラビアンの法則の3つの誤解

メラビアンの法則は、非言語情報の重要性を示唆する法則として知られていますが、実はいくつかの誤解が存在します。

ここでは、3つの代表的な誤解をみていきましょう。

誤解①「印象は最初の3秒で決まる」

メラビアンの法則は、印象形成では非言語情報が重要な役割を果たすことを示唆しています。

しかし、最初の3秒で決まると検証されたわけではありません。人は相手とのやり取りを通して、時間をかけて印象を形成していきます。

最初の3秒で受けた印象は、その後のコミュニケーションに影響を与えるかもしれませんが、それですべてが決まるわけではありません。

怖そうだと思っていたけど、話してみるといい人だったなんて経験がある人も少なくないでしょう。最終的な人の印象は、その後の関わり方によって大きく変わります。

誤解②「印象は視覚によって決まる」

メラビアンの法則は、視覚情報が印象形成において重要な役割を果たすことを示唆していますが、視覚情報だけが重要であると解釈するのは誤解です。

実験結果では、視覚情報が最も強い印象を与えることが示されていますが、聴覚情報や言語情報も無視できない影響力を持っています。

見た目だけ気にするあまり、中身のない会話ばかりの人では、より印象が悪化する可能性もあります。

誤解③「メラビアンの法則は万能な法則」

メラビアンの法則は、万能な法則ではありません。

メラビアンの研究結果は、特定の条件下における被験者の反応に基づいており、すべての状況に当てはまるわけではありません。

また、文化や個人の性格によっても、非言語情報の重要性は変化する可能性があります。「この法則さえ理解すればいい」と誤って解釈しないように注意してください。

コミュニケーションのポイント

メラビアンの法則を意識したコミュニケーションのポイントを3つに分けて説明します。それぞれ見ていきましょう。

誠実な態度と表情

相手とのコミュニケーションにおいて、見た目や表情は非常に重要です。

誠実な態度と表情とは、以下のようなものを指します。

  • 自然な笑顔
  • アイコンタクト
  • うなずき
  • 身を乗り出す姿勢
  • 相手の話に耳を傾ける姿勢

これらの態度や表情は、相手に安心感を与え、信頼関係を築くのに効果的です。また、自分の話に自信を持っていることを示すこともできます。

具体的なポイントには、以下のようなものが挙げられます。

  • 自然体で、ありのままの自分を見せることが大切
  • 作り笑顔や不自然な表情は、かえって逆効果になる可能性がある
  • 相手の立場や状況に合わせて、態度や表情を調整する

誠実な態度や表情は、一朝一夕で変わるものではありません。普段の自分の日常を振り返り、取り入れられそうな部分から始めてみましょう。

明確な声と話し方

明確な声と話し方は、相手に情報を正確に伝え、話の内容に説得力を持たせられます。具体的には、以下のような点を意識しましょう。

  • 適切な声の大きさで話す
  • ゆっくりと丁寧に話す
  • 抑揚をつける
  • 間を意識する
  • 滑舌を良くする

明確な声と話し方は、相手に好印象を与え、信頼感を得るためにも重要です。

録音して自分の話し方を客観的に分析してみるのも効果的です。声のボリュームや滑舌は、気付いたとしてもすぐに改善できない場合もあるでしょう。

声のトレーニングや発声練習を日々のルーティンにするのも一つの方法です。また、話し上手な人の話し方を参考にするのも良いでしょう。

適切な距離感とボディランゲージ

適切な距離感とボディランゲージは、相手に心理的な距離感を縮め、親しみやすさや好印象を与えるために欠かせません。

具体的には、以下のような点に注意しましょう。

  • パーソナルスペースを意識する
  • うなずきやジェスチャーを活用する
  • 腕組みをしない

これらのポイントを意識すれば、相手との心理的な距離感を縮め、親しみやすさや好印象を与えられます。適切な距離感とボディランゲージは、相手との信頼関係を築くためにも重要です。

相手の文化や習慣を理解した上で、適切な距離感とボディランゲージを心がける必要があります。相手の反応を見ながら、臨機応変に対応していきましょう。

メラビアンの法則を活用した実践例

ここでは、メラビアンの法則を活用した実践例をいくつか紹介します。

営業職

営業職にとって、顧客とのコミュニケーションは成否を左右する重要な要素です。メラビアンの法則を意識した立ち居振る舞いは、顧客との良好な関係構築に役立ちます。

以下は、営業職での具体的な実践例です。

  • 顧客との初対面では、明るくハキハキとした声で挨拶する
  • 説明中は、ゆっくりと丁寧に話す
  • 重要なポイントを強調する時は、声のトーンを上げる
  • 顧客の話を聞く時は、姿勢を正し、アイコンタクトを取る

これらの点を意識すれば、顧客に好印象を与え、信頼関係を築きやすくなります。

また、顧客のニーズを正確に把握し、適切な提案を行えるでしょう。顧客との信頼関係を築き、円滑なコミュニケーションを促進すれば、成約率アップにもつながります。

リーダー職

リーダー職を勤める方にとって、メラビアンの法則は有効なツールです。

リーダーは、自身の言葉、声のトーン、表情、服装、身だしなみといった非言語情報に気を配ることで、メンバーに安心感を与え、モチベーションを向上させられます。

具体的には、以下のような実践例が挙げられます。

  • メンバー全員が発言しやすい雰囲気を作るために、笑顔でアイコンタクトを取り、積極的に質問を投げかける
  • 共感を示すために、うなずいたり、体を傾けたりする
  • メンバーと積極的にコミュニケーションを取る

これらの実践例はほんの一例です。

リーダーは、状況に応じてさまざまな方法でメラビアンの法則を活用し、メンバーとの円滑なコミュニケーションを図ることが重要です。

電話対応

電話では、視覚情報が遮断されるため、聴覚情報がより重要な要素を占めます。

具体的には、以下のようなポイントを意識しましょう。

  • 明るく、ハキハキと話す
  • 相手の話をよく聞き、丁寧な言葉遣いを心がける
  • 適度に抑揚をつけて話す
  • 適切なタイミングで間を置く
  • 「お気持ちお察しします」など共感を示す

電話対応は、お客様との信頼関係を築くための重要な機会です。

メラビアンの法則を活用して、質の高い電話対応を心がけましょう。

メール・チャット(テキストコミュニケーション)

メールやチャットなどのテキストコミュニケーションでも、メラビアンの法則は有効です。

文章のみで相手に伝えるため、誤解が生じやすいデメリットもありますが、以下の点に注意すれば、円滑なコミュニケーションを促進できます。

  • 丁寧な言葉遣いを使う
  • 誤解が生じやすい表現を避ける
  • 文章を簡潔にまとめる
  • 適度に絵文字や記号を活用する
  • 文末表現に気をつける

メールやチャットは、手軽で便利なコミュニケーションツールですが、誤解が生じやすいデメリットもあります。

相手に伝わりやすいメッセージを送るように心がけましょう。

メラビアンの法則の参考書籍

メラビアンの法則についてより深く理解したい場合は、以下の書籍がおすすめです。

「メラビアンの法則とは?/ノンバーバルコミュニケーションの活用」 (メラビアンの法則推進委員会)

本書では、メラビアンの法則の基礎知識から、実践的な活用方法まで、幅広く解説されています。メラビアンの法則を初めて学ぶ方におすすめの一冊です。

「メラビアンの法則/コミュニケーションスキル」 (メラビアンの法則研究会)

本書では、メラビアンの法則をコミュニケーションに活かすための具体的なテクニックを紹介しています。プレゼンテーションや面接、営業など、さまざまな場面で役立つ内容が満載です。

『メラビアンの法則/melabians law =Verbal・Vocal・Visual』(メラビアンの法則分析活用委員会)

本書では、メラビアンの法則を様々な場面で活用するための具体的な事例を紹介しています。メラビアンの法則をビジネスや日常生活に役立てたい人におすすめの一冊です。

これらの書籍は、いずれもAmazonや楽天などのオンライン書店で購入できます。

まとめ

メラビアンの法則は、コミュニケーションにおいて非言語情報が重要であることを示した法則ですが、誤解されやすい点も存在します。

重要なのは、言語情報と非言語情報を一貫性を持って伝えることです。例えば、笑顔で明るく話しながらも、否定的な言葉を使えば、相手は混乱してしまいます。

メラビアンの法則を正しく理解し、実践すれば、より円滑なコミュニケーションを図れます。

本記事では、メラビアンの法則の概要や意識すべきポイント、実践例、参考書籍まで紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

メラビアンの法則を理解し、日常でのコミュニケーションを見直せば、より良い信頼関係を構築できるでしょう。

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この記事を書いた人

企業の管理部に3年在籍。
人事やマーケティングなどの業務にも携わった経験を活かし専門的な用語や知識をわかりやすく解説することを心がけています。
行政書士試験にも合格しており、行政書士補助者として起業家サポートを業務に携わった知識と経験もあるため、補助金や助成金、マネジメントについても熟知しています。
これまで培った知識や経験を元に、経営者の方に役立つ情報をお届けします。

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