人材不足の問題が深刻化している近年、企業において人材育成がより重要視されつつあります。
人材育成の形式や方法が多種多様になってきている傾向にありますが、多くの企業が人材育成に、OJTを導入していることはご存知でしょうか。
そこでこの記事では、OJTの概要や他企業の具体例を解説していきます。
企業の新人研修に有益な情報を多く紹介していますので、管理職や人事担当の方はぜひ最後までご覧ください。
OJTとは何か?
OJT(On-the-Job Training)は、職場で実際の業務を通じて行われる研修方法です。新人社員や未経験者が先輩や上司の指導のもと、実際の仕事を体験しながらスキルや知識を習得します。
具体的な業務内容や職場のルールを体験しながら学べますので、実践的な能力を身につけられます。
新人社員の力を効率的に向上できる研修方法のため、導入している企業の数は多いです。
OJTが導入されている背景とは?
OJTの導入が進んでいる背景として、以下のような企業のニーズが高まっているからであると推測できます。
- 業務効率を向上させたい
- 新人社員・未経験者の定着化を図りたい
- 新人社員の活躍の場を広げたい
特に新人社員・未経験者の定着化は、令和に入ってから企業が注目しているポイントであり、早期辞職の対策にも期待できるため、OJTを積極的に活用している企業が増えてきています。
テレワークでも活用できる
OJTはテレワークでも活用しやすい研修制度であり、以下のような形でOJTをすることが可能です。
- コミュニケーションチャットやWeb会議ツールを利用して、定期的なコミュニケーションを図る
- ツールにタスクを定期的に設定することで、育成課題を解決する
- 課題や業務の進捗をツールで共有し、意見をフィードバックする
- 録画や録音機能を使い、育成プログラムをスムーズに進める
- OJTに特化したツールを活用する(例:shouin+やgamba!など)
働き方改革もあり業務のリモート化が進んでいる中、研修制度にOJTを取り入れることで、リモート業務でも新人社員の育成ができます。
OFF-JTとの違いとは?
OFF-JT(Off-the-Job Training)は、職場外で行われる研修方法を指します。
主に研修施設やセミナー会場、オンラインプラットフォームなどで実施され、専門的な知識やスキルを体系的に学ぶことが目的です。
OJTとは異なり、OFF-JTは外部講師などに依頼して育成を行います。そのため、実務から離れて理論的な背景や新しい視点を得ることが可能です。
SDとの違いとは?
SD(Self Development)は、個人が自主的に成長する人材マネジメントの方法のことを指します。
OJTとは違い、企業が提供している教材やプログラムを、自主的に取り組めますので、個人のニーズに合わせた学習をすることが可能です。
ただ、個人の積極性に左右される研修制度であり、SDで研修を実施するためには、教育を助長するシステムを構築しなければなりません。
メンター制度との違いとは?
メンター制度は、経験豊富な社員(メンター)が新入社員や若手社員(メンティー)に対して、業務上の指導やキャリア相談を行う制度です。
メンターは、メンティーに対して専門知識やスキルの共有、職場環境への適応支援、キャリア形成の助言を提供します。
メンター制度とOJTは似ている研修制度ですが、OJTはあくまでも業務内容の教育がプログラムに含まれるのに対し、メンター制度はライフワークバランスやキャリアデザインの助言など、業務内容だけでなく、より広範囲の教育がプログラムに含まれています。
OJTのメリット4選
ここでは、OJTのメリットを4つ解説します。
「OJTを導入したいけど具体的な効果やメリットがわからない」と判断を留まっている経営者や人事担当者も多いかと思います。
この項目を確認することで、簡単にOJTのメリットを理解することが可能です。
メリットを理解することで、より効果的な研修プログラムを組むこともできますので、導入しようか悩んでいる人は参考にしてみてはいかがでしょうか。
- 個人のペースで教育ができる
- 即戦力を育てられる
- 教育コストが軽減できる
- コミュニケーションが活性化する
①個人のペースで教育ができる
OJTでは、教育担当者が新入社員の力量や学習速度を考慮して、プログラムを実施しやすい傾向があります。
大人数の座学など、集合研修を実施するとどうしても一律の教育内容になってしまうため、人によって満足度や理解度が異なってしまいがちです。
ただ、OJTは教える対象が1人の場合がほとんどであるため、その人の理解度に合わせたプログラムを臨機応変に進められます。
②即戦力を育てられる
OJTは業務の中で研修を実施するため、他の研修制度よりも即戦力を育てやすいです。
他の研修だとメインが座学になってしまうため、業務をする上での理論や概念を理解できる段階で留まることがほとんどです。
一方OJTでは、教育担当の社員が新人社員に業務を通して研修を実施するため、業務内容を実際に行うだけでなく、業務内容のフィードバックを、教育担当社員から即座に提供できます。
加えて、現場の環境に早い段階から慣れることが可能であったり、顧客との関係性を新人社員の段階で築けたりするなど、今後の業務に役立てられる多数のメリットが得られます。
③教育コストが軽減できる
OJTは、集団で実施する研修に比べて、教育コストを削減できる効果もあります。
集団で行う研修は、会場を用意したり、効果の教材や講座の手配などをする必要があるため、多くの費用が発生します。
一方、OJTは日々の業務内で実施できるため、費用を大きく抑えることが可能です。
また、即戦力になる人材を育成できる効果も期待できるので、即座に生産力が上がることも想定できます。
④コミュニケーションが活性化する
OJTの性質上、教育担当の上司や先輩社員と新入社員の間でコミュニケーションを取る必要があるため、研修を通して社内の風通しも良くなる効果があります。
コミュニケーションの活性化は、新入社員の定着化にも大きく繋がりますので、人材流出を防ぐ手段としても有効です。
また、新入社員とのコミュニケーションを通して、教育担当である上司や先輩のコーチング力の向上や、視野が広くなるなど人材教育を同時並行で進めることも可能です。
OJTのデメリットを把握することも重要
なお、OJTには以下のようなデメリットも存在します。
- 教育担当者の負担が大きい
- 育成プログラム・効果に差が生じやすい
- 効果の測定が難しい傾向がある
- 業務に必要な知識が必ずとも身につくとは限らない
また、専門的な知識を要する職場や、勤務時間が不規則な職場には、OJTの研修制度が向いていないことも考えられるので、業務の特性や教育担当者のリソースを考慮して、導入するか決めると良いでしょう。
【簡単に実践できる】OJT導入手順を5つのステップ紹介
ここでは、OJTの導入手順を5ステップで紹介します。
初めて導入しようと考えている方は、以下のステップを参考にして、人材育成を実施すると良いでしょう。
OJTを通して新入社員に何を学ばせたいか、目標を明確に設定しましょう。
習得すべき具体的な知識内容やスキル内容を定めておくことで、OJTの学習効果に差が出ないようにすることが可能です。
新入社員の場合は、即戦力になる上で必要なスキルを、中堅社員の場合は、異動先の業務に対応する専門知識の内容を定めると良いでしょう。
OJTは教育担当者の上司や先輩社員が中心になって教育を実施するため、事前に教育スケジュールを共有しておくことが重要です。
スケジュールを共有しておくことで、教育担当者のリソースを軽減できる対策を練ることが可能なうえ、短期間で学習効果を得ることもできます。
OJTを実施するためには、教育担当をする社員を決めることが必須です。
教育担当者である社員のスキルや指導方法によって、新入社員の成長度合いが大きく変わってくるため、慎重に選ぶように心がけましょう。
また、教育担当者である社員の負担が大きくなることが予想できますので、業務の調整をしてあげると、教育に専念しやすい環境が整います。
OJTの教育サイクルは以下の手順を意識して、実施しましょう。
- Show(やってみせる)
- Tell(説明する)
- Do(やらせてみる)
- Check(評価・追加指導)
指導する際には、「なぜその方法が適切なのか?」をTellの時点で伝えることが重要です。
OJTの研修が終了したら、研修内容を評価することをおすすめします。
研修内容を評価し、教育担当社員にフィードバックすることで、教育担当社員の人材育成も実施できます。
なお、評価する基準や内容は、業務遂行能力だけでなく、課題解決能力やコミュニケーション能力など総合的な視点で評価すると良いでしょう。
OJTの成功事例を紹介
ここでは、他社のOJTの成功事例をまとめました。成功事例を上手く活用することで、自社のOJTの質を高めることが可能です。
もちろん、初めて導入する場合でも、実施する方法を決めるヒントにも繋がりますので、OJTに関わる方は確認してみると良いでしょう。
スターバックスコーヒージャパン株式会社
スターバックスコーヒージャパン株式会社では、OJT教育のシステムを高品質で整備しており、指導方法も標準化がなされています。
標準化された指導方法のもと、先輩社員が実践的な技術を指導することで、即戦力となる社員育成に成功しています。
マルハニチロ株式会社
マルハニチロ株式会社では、2泊3日の合宿研修とOJTを組み合わせた教育プログラムを実施しています。
また、新入社員の1名に対し部署ごとでOJTリーダーを設定することによって、部署全体で教育する意識を持てるので「1:1の指導による偏りをなくす」OJTが実施できます。
OJTを導入する上で注意すべきポイント
ここでは、OJTを導入する上で注意すべきポイントを3つ紹介します。
OJTは低コストで即戦力の人材を育成しやすい一方、システムをしっかりと整えないと、効果が期待できなくなるだけでなく、生産力低下にも繋がる危険があります。
以下のポイントを意識すると、OJTのデメリットを防ぐことが可能ですので、OJTを導入する際には、参考にしてみると良いでしょう。
- 指導される社員の性格を把握する
- 達成基準を明確にする
- 教育内容によって、OJT以外も使い分ける
指導される社員の性格を把握する
指導する新入社員の性格を理解することは、適切なプログラムを組む上でもっとも重要なポイントです。
指導している社員の理解度や得意分野によって、実施するプログラムを臨機応変にチューンアップさせましょう。
達成基準を明確にする
達成基準を設定する際には、具体的な数値を用いて、明確な基準を設けておくように心がけましょう。
数値の設定が難しい場合は、業務内容をいくつかに分けて、チェックポイントを設定することをおすすめします。
教育内容によって、OJT以外も使い分ける
教育内容や、身に着けたいスキルなどによって、OJT以外の研修方法を使い分けるようにしましょう。
特にOff-JTを併用し、業務マニュアルや業務内容を事前に把握してもらうことで、OJTの効果を最大限に発揮することも可能です。
OJTを導入して、社員の基礎能力を底上げしよう
この記事では、OJTの概要や具体例を紹介しました。OJTは多くの企業で導入されている研修方法であり、導入することで即戦力になる人材育成が可能になります。
ただ、システムや導入フローを注意して行わないと、新入社員だけでなく教育を担当する先輩社員にも悪影響を及ぼすことがあります。
この記事の情報を参考に、人材育成にOJTを活用してみてはいかがでしょうか。