【中小企業の経営者必見】会社経営の失敗事例から学ぶ、経営者がやってはいけない5つのこと

2017年度版中小企業白書によると日本企業の起業後の企業生存率は5年後で約8割です。

欧米諸国が4割程度となっている点と比べると高い水準にあると言えます。日本の起業数は世界と比べても少ないと言われていますが、起業する人はしっかりした経営計画を立てる人が多いため、会社経営に成功する人も多いと考えられます。

しかし、会社経営が簡単だということではなく、経営者として最低限の心構えを知っておかなければ、会社経営は失敗してしまいます。

この記事では、5年以内に会社経営に失敗する2割に入らないように、そして、5年後も会社経営を続けられるように、経営者として知っておくべき心構えをまとめました。

参考:リンク2017年度版中小企業白書109ページ

目次

代表的な会社経営の失敗事例

企業生存率の高い日本国内にあって、なぜ、会社経営に失敗してしまうのでしょうか。代表的な会社経営の失敗事例を解説します。

  • 資金計画で会社経営に失敗してしまう
  • 営業や集客で会社経営に失敗してしまう
  • 人材確保や育成で会社経営に失敗してしまう
  • 経営者の能力不足で会社経営に失敗してしまう

資金計画で会社経営に失敗してしまう

資金を確保できなければ、会社経営は失敗してしまいます。資金調達の方法には4種類があります。それぞれの特徴を確認しておきましょう。

  1. デットファイナンス(負債)
  2. エクイティファイナンス(出資)
  3. アセットファイナンス(資産売却)
  4. 補助金・助成金

デットファイナンス(負債)

負債が増える資金調達方法です。代表例は、金融機関から融資を受けたり、社債を発行する方法、買掛金や支払手形などの仕入債務を増やす方法などが挙げられます。

元本と利息の返済義務があり、担保や保証人が必要になる上、キャッシュフローが圧迫されるデメリットがあるものの、レバレッジ効果が期待できることや資金の借り手が経営に介入せず、支払利息を損金に計上できる点が優れています。

エクイティファイナンス(出資)

自社に出資してもらうことにより資金調達を図る方法です。新株発行による第三者割当増資が代表例です。

新株発行により集めた資金は返済義務がなく、自己資金を強化できるメリットがありますが、株主が増えることによる手間やコストがかかることや経営権を奪われるリスクがあります。

その他、エンジェル投資家、ベンチャーキャピタル、クラウドファンディングによる資金調達方法もあります。

アセットファイナンス(資産売却)

会社が現在保有している資産を売却することにより、現金化し資金調達を図る方法です。

会社が保有する不動産などの固有資産の売却が代表例ですが、ファクタリング、リースバックなども含まれます。

会社の信用度に関係なく資金調達が可能ですが、現金化できる資産がなければ意味がありません。

補助金・助成金

国や地方自治体、公的機関が実施する補助金・助成金を受け取ることです。補助金・助成金は、返済する必要がない点がメリットですが、支給を受けるためには厳しい審査をクリアしなければならないケースも多い点がデメリットです。

会社経営で失敗しないためには、これらの4種類の資金調達方法をうまく活用して、十分な資金を確保する必要があります。

しかし、起業初期など会社に信用がない段階では、金融機関からの融資を受けられなかったり、新株発行にしても株式を買ってくれる人がいないなどの理由により資金調達が困難を極め、結果として資金が足りず、会社経営に失敗してしまうこともあります。

営業や集客で会社経営に失敗してしまう

優れた商品やサービスを開発しても、それを購入したり利用してくれるクライアントがいなければ意味がありません。

ところが営業や集客がうまくいかないために会社経営に失敗してしまうケースもあります。

消費者向けの営業であれば、次の4種類のマーケティング手法をうまく活用して、浸透を図ることが大切です。

企業間取引の場合も、マーケティングが重要ですが、信用も重要です。

取引実績が少ない場合は、新規取引に慎重になる企業も多いため、会社設立当初の営業は取引先を探すのに大変苦労することになります。

人材確保や育成で会社経営に失敗してしまう

一人株式会社であれば、設立当初は取締役社長自身があらゆる業務を担うこともできます。しかし、会社の業績が伸びていけば、人手が足りなくなるため、人材確保が課題になります。

今は、多くの業界で少子高齢化により人材確保が難しくなっているため、戦略を立てることが重要になっています。

具体的には次の4つを見直すことで、働きやすさや働きがいを醸成し、企業の採用力・人材の定着率を高める必要があります。

  • 採用管理……人材の募集や選考
  • 定着管理……採用した人材の配置・配属、評価・処遇、教育訓練・能力開発
  • 就労条件……労働条件、労働環境、人間関係、福利厚生
  • 理念・価値観……経営理念や組織文化

人材を確保できず人手不足に陥ってしまうと、事業の拡大ができなくなりますし、新商品の開発や研究にも手が回らなくなり、会社経営も失敗してしまいます。

経営者の能力不足で会社経営に失敗してしまう

一人株式会社のように小規模な会社の場合は、会社経営を成功させるか、失敗するかは、経営者個人の資質や能力、経営者自身が立てる経営計画に左右されます。

会社経営に失敗してしまう経営者の特徴は次のとおりです。

経営や会計に関する知識が不足している

会社経営を成功させるためには、経営者自身が経営や会計に関する知識を身につけなければなりません。

上記に紹介した資金調達方法、マーケティング、人材育成に関する知識は、いずれも会社経営で失敗しないために重要な知識です。

また、会計に関する知識がなければ、会社の資金計画を立てることもできませんし、社会保険や税金についても知っていないと、どれだけの支出が必要なのか分からず、不適切な経営や放漫経営につながってしまいます。

経営計画やビジネスモデルがあいまいな場合

会社経営を成功させるためには、成立当初からしっかりした経営計画やビジネスモデルを構築しておくことが大切です。

経営計画やビジネスモデルを経営者が一人で練り、第三者の評価を受けていない場合は、その内容があいまいだったり、非現実的な計画になっていることもあります。

少なくとも資金調達のために事業計画書を作成して、金融機関や投資家にチェックしてもらい評価を受けることは必須です。資金調達がうまくいかないような事業計画書の場合、会社経営は失敗する可能性が高いです。

一人株式会社でも、経営者個人だけで経営計画やビジネスモデルを考えるのではなく、外部の有識者からのアドバイスを取り入れるべきでしょう。

人を見極める力がない場合

会社経営では社内外で様々な人と関わることになります。社内では従業員を採用して、仕事を指示するだけでなく、事業拡大に伴い、従業員の裁量に任せるべき部分も増えていきます。

また、社内でノウハウが足りない場合は、外部の人材を活用したり、業務委託を行う必要性も生じます。

いずれの場面でも、経営者には人を見極める力が問われることになります。

業務を任せるべきでない人に、大切な仕事を委ねてしまった場合は、事業がうまくいかなくなり会社経営に失敗してしまうこともあります。

また、共同経営者やビジネスパートナーとの対立が生じてしまったり、資金や経営資源を持ち逃げされてしまうといったトラブルがきっかけで会社経営に失敗してしまうこともあります。

共同経営者やビジネスパートナーが信用できる人なのか、自分とうまくやっていける人なのかを初期の段階で見極めることも大切です。

会社経営の失敗を避けるためには

会社経営の失敗を避けるための対策は、個々の会社ごとにそれぞれ異なりますが、どの業界で起業するにしても最低限押さえたい点を紹介します。

会社の経営状態に常に目を配る

会社経営で失敗しないためには、常に会社の経営状態を把握しておくことが大切です。

経営者が会社の経営に関して目を配るべきことは、会社の規模や事業内容により大きく異なりますが、どの業種でも次の3点は必ずチェックする必要があります。

  • 会社の資金は足りているのか
  • 集客・販売ができているのか
  • 必要な人材を確保できているのか

会社の資金は、単に預金残高だけを見るのではなく、貸借対照表、損益計算書も含めて、会社全体の資金状況を把握することがポイントです。

集客・販売も、短期的な売り上げだけでなく、長期的な計画からチェックすることがポイントです。現在進めている集客・販売プロジェクトを成功させることはもちろんですが、同時に次期のプロジェクトを計画し適切な時期に開始できるようにしておくことが大切です。

人材確保も、足りなくなってから慌てて補充しようとしても、手遅れになることが多いため、余裕をもって計画を立てることが大切です。

無駄なコストや業務がないか見直す

会社経営に成功して資金調達がうまくいき、人材確保が容易になっても、会社の資金や人材は限られています。無駄なコストが発生していれば、カットすべきですし、無駄な業務のためにリソースを割くべきではありません。

経営者がミクロな仕事に忙殺されて、マクロな視線を失ってしまうと、無駄なコストや業務に気づくことができず、会社経営の大きな負担となってしまうことがあります。

小規模の会社の場合は、経営者自身が営業に回らなければならない場合があるのはやむを得ないことですが、営業の仕事を行いつつも、常に会社全体の業務内容を俯瞰する意識を持つことが大切です。

経営者自身にこうした余裕がない場合は、外部の有識者に会社の業務全体を評価してもらい、気づきを得ることも大切でしょう。

経営理念を多くの人と共有する

個人事業主が一人にやれることには限度があるため、会社を設立し、多くの従業員を抱えて事業を拡大することも会社設立の目的の一つだと思います。

それならば、経営者の考えていることを胸の内に秘めておくのではなく、従業員と共有することが大切です。経営者の考え方を知ることで従業員も会社での働き方を理解し、経営者の理想に近い働き方をしてくれるものです。

また、従業員と意見交換しながら、経営理念をより多くの人に共感できる内容に昇華させていくことも大切です。

共感してくれる人が増えれば、従業員が働きやすくなることはもちろん、取引先の理解も得られやすくなり、会社経営も成功しやすくなります。

経営者としてやってはいけない5つの行動

会社経営で失敗する経営者が取りがちな行動パターンを5つ紹介します。もしも、これらのいずれかに心当たりがある場合は、会社経営に失敗してしまう可能性が高まりますから、今すぐに、改善すべきです。

  • 経営について学ばない
  • 経営をしない
  • 無計画に設備投資や事業拡大に踏み切る
  • 流行りや儲かるという噂に飛びつく
  • 人を無条件に信用してしまう

経営について学ばない

会社経営では経営者には様々な知識が求められます。

経営する会社が属する業界の専門知識や常識を知らなければならないのは当然ですが、経営者ならば、経営に関する知識も必要です。

具体的には、経営戦略策定、マーケティング、組織運営、財務会計、税金、社会保険などについての知識です。これらの知識がない状態で会社の経営を行おうとしてもうまくいきませんし、失敗する可能性が高くなります。

一人株式会社のように小規模な会社の経営者は、経営に関する知識がないまま、会社経営を始めてしまうこともあるでしょう。

規模が小さいうちは、問題ないこともありますが、会社の規模が大きくなると必ず行き詰まるので、少しずつ勉強を始めて、最低限の知識は身につけましょう。経営に関する専門知識が不足していると感じたら、外部の専門家のアドバイスを受けたり、経営経験のある人材を採用するといった対応も必要です。

経営をしない

一人株式会社のように小規模な会社の経営者にありがちなことですが、そもそも経営を行っていないことがあります。

経営とは、マクロな視点に立って会社の経営状態を見極めて、今後の方向性について検討することです。

ところが小規模な会社の経営者は、注文を取ることや入ってきた依頼をこなすことに忙殺されて、会社が現在どのような経営状態にあるのか見極めることができていないことがあります。

人手が足りない場合は、経営者自身が営業の仕事をすることもやむをえませんが同時に、経営も行うことを忘れてはなりません。

すべて自分でこなすことが難しい状況になった場合は、経営に関して外部の専門家からアドバイスを受けることも検討すべきです。

無計画に設備投資や事業拡大に踏み切る

仕事が増えてきたとか、注文が殺到するようになったからと言って、先の見通しも考えず、また、何の計画も立てずに設備投資を行ったり、事業拡張に踏み切るのは危険です。

設備投資や事業拡大の際は、市場の調査や分析を行った上で、設備投資や事業拡大のために投入した資金を回収するための計画を立てなければなりません。

今は、注文が殺到していても、将来の需要が見込めない場合は、設備投資や事業拡大は控えましょう。

また、将来の需要は経営者の感覚で判断するのではなく、外部の専門家のアドバイスも受けながら判断すべきです。

流行りや儲かるという噂に飛びつく

「今、これが流行っている」「これが今、儲かる」という噂が流れることもあります。そうした噂を見聞きして、すぐに飛びつくことは経営者としては絶対に慎まなければならないことです。

流行は必ず廃れますし、今、流行りに乗って成功している人は、今になって思い付きで始めたわけではなく、次に流行るものを予測し、前もってコツコツと準備を重ねた結果、成功したというケースがほとんどです。

今、流行っているという時に流行りに乗ろうとしても、そのための資金、設備、人材、営業ルートの開拓など、様々な準備が必要になります。こうした準備を行っている間に、流行りは廃れてしまい、準備が整った時には、すでに下火になってしまい、投入した資金を回収できなくなりがちです。

経営者なら、今の流行に乗るのではなく、「次に何が流行るか」を見極めて、そのための仕込みを行うべきなのです。

人を無条件に信用してしまう

会社経営では大きな資金が動くだけに、その資金が狙われる危険があることに注意しましょう。典型的な失敗例が、信頼していたパートナーや共同経営者に資金や経営資源を持ち逃げされてしまうことです。

また、株式を渡しすぎたために、経営が軌道に乗ったところで会社を乗っ取られてしまうこともあります。

残念ながら、世の中には大金を目にすると誘惑に駆られて裏切る人もいます。

会社経営では、人を信用してある程度任せることも大切ですが、無条件に信用するのは危険なので、何を任せるにしても、チェックできる体制を整えておき、透明性を保つことが重要です。

まとめ

日本で、起業5年後の企業生存率が約8割と高いのは、起業に際して入念な準備を重ねる経営者が多いためです。しかし、5年経過後は、企業生存率が低下していきます。

経営者の気が緩み放漫経営に傾いていくことも原因と考えられます。

中小企業の多くは経営者の影響力が強く、会社経営で成功するか失敗するかは、経営者の心構え次第と言っても過言ではありません。

自分が経営者としてやってはいけない行動に走っていないか、常に意識することが大切ですが、ご自身で判断が難しい場合は、外部の支援機関や専門家に相談するなどして、会社経営の課題を洗い出しましょう。

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この記事を書いた人

普段は、業務歴20年の建設業支援専門の行政書士です。文章を書くことが好き&得意で、行政書士業務の傍ら、公的機関などで不動産、法律関係の専門性の高い記事を執筆。専門的な資料を精読したうえで、一般の方に向けて、正確かつ分かりやすく書くことを心がけており、好評を頂いております。ライターの仕事は知識を吸収し整理することにもつながるので、これからもコツコツ続けていきます。

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