企業の成長を支えるのは人材です。特に、将来の経営を担う幹部候補の育成は、企業にとって最重要課題の1つです。
しかし、優秀な幹部候補を見極め、効果的に育成するのは容易ではありません。
本記事では、幹部候補に必要なスキル・資質、選抜方法、育成手順などを解説します。
本記事で紹介した内容を参考に優秀な幹部候補を育成し、企業の経営安定化や継続的発展に役立ててください。
幹部候補とは?
幹部候補とは、将来、経営幹部や役員としての活躍を期待されている社員のことです。
幹部候補は、新しい戦略を策定し、実行していくだけではなく、組織をまとめ、社員を導く役割も担います。
幹部候補の育成は、事業の持続的な成長と安定化を目指す上で、不可欠です。
しかし、すべての社員が幹部候補になれるわけではありません。
企業は、それぞれの社員の能力や適性を評価し、適切な育成プログラムを提供しなければなりません。
幹部候補の役割
幹部候補は、将来的に企業の経営を担う人材として、以下のような役割を担います。
- 経営戦略の策定・実行
- 組織のマネジメント
- 社内外との交渉
これらの役割を担うためには、多様なスキルと資質が必要です。
幹部候補は、単に指示に従って業務を遂行するだけではなく、自ら考え、行動し、結果を出せる人材であることが求められます。
また、変化に柔軟に対応し、新しいことに挑戦するチャレンジ精神も重要です。
一般社員や管理職との違い
幹部候補は、一般社員や管理職とは異なる役割と責任を担っています。
具体的な違いをまとめると、以下のような違いが挙げられます。
項目 | 一般社員 | 管理職 | 幹部候補 |
---|---|---|---|
裁量権 | 上司の指示に従って業務を遂行 | 部署やチームを管理し、業務目標の達成に向けた指示 | 経営戦略の立案・実行など、より高度な意思決定 |
責任 | 自分の担当業務に対する責任 | 部署やチーム全体の業績に対する責任 | 企業全体の業績に対する責任 |
求められる視点 | 目前の業務に集中する | チームや部門全体の目標達成に焦点を当てる | 企業全体の戦略やビジョンに基づいて、長期的な視点で物事を考える |
幹部候補は、単に業務を遂行するだけではなく、経営課題を分析し、解決策を導き出す高い能力が求められます。
幹部候補が必要な理由
幹部候補が必要となる理由は、主に以下の2つが挙げられます。
- 後継者育成
- 組織全体の活性化
後継者育成
経営者は、企業の経営方針を決定し、実行する責任を担っています。
しかし、経営者はいつかは退任しなければなりません。
後継者となる人材がいなければ、その時点で企業が存続できなくなってしまうリスクが発生します。
帝国データバンクの調査によると、後継者不在による「後継者倒産」が、2023年には累計件数500件を超えています。(参照:帝国データバンク「「後継者難倒産」動向調査」)
優秀な幹部候補がいれば、企業を安定的に存続させられるでしょう。
組織全体の活性化
幹部候補は、将来の経営者候補として、組織全体を牽引する存在です。
幹部候補が積極的に行動し、周囲を巻き込みながら成果を上げていくことで、組織全体の活性化につながります。
幹部候補に求められるスキル・資質
幹部候補には、優秀な成績を収めることはもちろん、それ以外にも多角的なスキルと資質が求められます。
ここでは、幹部候補に求められる「必須スキル」と「重要資質」をみていきましょう。
必須スキル
幹部候補は、将来的に企業の経営を担う立場であるため、さまざまなスキルが求められます。
業種や企業体制によっても異なりますが、以下の4つは必須スキルとして挙げられます。
- 戦略的思考スキル
- コミュニケーションスキル
- 問題解決能力
- リーダーシップ
戦略的思考スキル
幹部は、組織のビジョンや目標を達成するために、長期的な視点で戦略を策定し、実行する必要があります。
そのためには、業界動向や競合企業の分析、自社の強みや弱みを把握した上で、SWOT分析などを活用し、的確な判断を下せるスキルが求められます。
コミュニケーションスキル
幹部は、社内外の人々と効果的にコミュニケーションを図り、組織をまとめていかなければなりません。
そのためには、わかりやすく簡潔な言葉で説明する、相手の立場に立って話を聞く、積極的にコミュニケーションを取るといったスキルが重要です。
問題解決能力
組織運営には、常にさまざまな課題が発生します。
幹部候補には、冷静沈着に状況を分析し、最適な解決策を導き出す問題解決能力が求められます。
リーダーシップ
幹部は、部下を指導育成し、組織全体の目標達成に向けて士気を高めるリーダーシップを発揮する必要があります。
リーダーシップとは、組織の目標達成に向けて、部下を鼓舞し導く能力です。カリスマ性や決断力、責任感、公平性などが求められます。
重要資質
幹部候補となる人材には、以下の5つの重要資質が求められます。
- 倫理観
- 向上心
- 自立性
- 継続力
- カリスマ性
倫理観
幹部候補にとって、倫理観は最も重要視される資質の1つです。
倫理観が欠如していると、企業の社会的信頼を損ない、風紀を乱すだけではなく、違法行為や不正行為に繋がる可能性も高くなります。
向上心
変化の激しい現代社会では、幹部は常に新しい知識やスキルを学び続け、自身の成長を追求する向上心が求められます。
現状に甘んじることなく、常に現状を打破し、より良いものを目指す姿勢こそが、組織を成長に導く原動力となります。
自立性
幹部候補は、与えられた指示をただこなすだけではなく、自ら課題を発見し、解決策を導き出す自立性が求められます。
上司からの指示がなくても、自ら考え、行動に移せる人物であることが大切です。
継続力
目標達成には、課題を乗り越え、最後までやり遂げる継続力が不可欠です。
幹部候補は、困難な状況に直面しても諦めずに挑戦し続け、目標を達成するまでの粘り強さが必要です。
カリスマ性
幹部候補は、周囲の人々を巻き込むカリスマ性を持つことが重要です。カリスマ性とは、人を惹きつけ、影響を与える力のことです。
カリスマ性を持つ人材は、人々の信頼を得て、組織をまとめて牽引していくため、組織の成長に貢献します。
これらの必須スキルや重要資質は、生まれつき備わっている場合もありますが、教育や訓練を通じて培うことも可能です。
幹部候補育成をする際には、これらのスキルや資質を伸ばせるようフォローする体制を整えなければなりません。
幹部候補の選抜方法
幹部候補を選抜する方法として、代表的なものは以下の3つです。
- 社内公募
- 中途採用
- リファラル採用
それぞれの詳細を見ていきましょう。
社内公募
社内公募は、幹部候補を広く発掘する有効な手段の1つです。社員の意欲向上や組織全体の活性化にもつながるため、積極的に活用したい方法です。
社内公募は、意欲の高い人材を発掘できる利点があります。しかし、応募者全員が幹部候補として適しているわけではありません。
選考では、以下の点に注意して評価を行いましょう。
- 応募理由とキャリアビジョン
- 業務実績
- スキル・経験
- 学習意欲
社内公募する場合は、選考基準を明確にし、透明性のある選考プロセスの構築が重要です。
上司や部門長の推薦に偏らない、客観的な評価基準を設けなければなりません。
中途採用
幹部候補となる人材を中途採用するのも1つの方法です。幹部候補の中途採用は、企業にとって多くのメリットをもたらします。
豊富な経験と専門知識を有する彼らは、即戦力として活躍できるだけではなく、企業理念やビジョンへの理解を深めながら、将来のリーダーへと育成していくことが可能です。
しかし、中途採用であれば誰でもいいわけではありません。適切な人材かどうかきちんと見極めなければなりません。
単に経験やスキルだけを見るだけではなく、企業理念やビジョンに共感し、積極的に行動できる人材かどうかを見極めることが重要です。
そのため、面接では過去の経験や実績だけではなく、候補者の考え方や価値観、将来のキャリアプランなどを丁寧に掘り下げることが必要です。
リファラル採用
採用難が深刻化する中、「リファラル採用」が注目されています。リファラル採用とは、自社の社員に友人・知人を紹介してもらう採用手法です。
社員自身が自社の魅力を理解しているため、企業理念や価値観に合致した人材を紹介してもらえる可能性が高いのが特徴です。
リファラル採用は、優秀な幹部候補を見つけるための有効な手段の1つです。制度設計や運用方法を工夫すれば、効果的に活用できるでしょう。
幹部候補の選定基準
優秀な幹部候補を見極め、組織の未来を担う人材の育成は、企業にとって最重要課題の1つです。
しかし、単に成績優秀な人材を選べば良いわけではありません。ここでは、幹部候補を見極める方法と面接する際の具体的な質問例を紹介します。
幹部候補を見極めるための方法
幹部候補となる人材を見極めるためには、さまざまな方法があります。ここでは、3つの方法を紹介します。
- 360度評価を取り入れる
- アセスメントを実施する
- 日々の言動や成果を評価する
360度評価を取り入れる
360度評価とは、上司や部下、同僚など、さまざまな立場の人から評価を得る制度です。幹部候補となる人材は、周囲から高い評価を得ていることが重要です。
360度評価を実施すれば、周囲の人からの客観的な意見が得られます。
アセスメントを実施する
アセスメントとは、性格や能力、適性などを検査するものです。幹部候補となる人材には、特定の性格や能力、適性が求められます。
アセスメントを実施すれば、その人の資質が、幹部候補として求められる資質と一致しているかどうかを判断できます。
日々の言動や成果を評価する
日々の業務での言動や成果は、その人の能力や資質を判断する上で重要な情報となります。
上司に対する態度だけではなく、同僚や部下にどのように接しているかを見れば、その人の本質が見極めやすくなります。
幹部候補となる人材には、さまざまなスキルや資質が求められるため、見極めるのも簡単ではありません。1つの方法で判断するのではなく、複数の方法やさまざまな角度で見極められるよう意識しましょう。
幹部候補選考での面接の質問例
幹部候補の選考面接では、単に過去の経験やスキルを問うだけではなく、候補者が将来リーダーとして活躍できる資質を総合的に判断する必要があります。
以下、面接で確認したいポイント別に具体的な質問例をいくつか紹介します。
困難な状況を乗り越えた経験を具体的に教えてください。目標達成のために、どのような努力をしましたか?
以下の課題に対して、解決策を導き出すまでの思考過程を説明してください。(具体的な課題を設定)過去の失敗経験からどのような学びを得ましたか?
異なる意見を持つ人々とどのように協働していきますか?周囲を巻き込み、目標達成に導くためのコミュニケーション方法は?
仕事を通して、どのようなことを成し遂げたいですか?5年後、10年後、どのようなキャリアを築きたいですか?
これらの質問はあくまでも例であり、企業や職種によって必要なスキルや重視するポイントは異なります。
企業の方向性や職種に合った質問を作成し、幹部候補となる人物かどうかの見極めが重要です。
幹部候補の効果的な育成手順
幹部候補の育成は、企業の将来を担う人材を育てる重要な取り組みです。
しかし、単に優秀な人材を選定するだけでは十分とは言えません。
組織のビジョンや戦略を理解し、実行できる人材へと成長させるための体系的な育成プログラムが必要です。
ここでは、効果的な幹部候補の育成手順を3つのステップで紹介します。
個別育成プログラムの策定
選定された幹部候補一人ひとりの強みや弱み、キャリアプランなどを考慮した個別育成プログラムを策定する必要があります。
プログラムの内容としては、以下のようなものが考えられます。
OJT | 実際の業務を通して経験を積む |
---|---|
Off-JT | 研修やセミナーに参加して知識やスキルを習得する |
メンタリング | 上司や先輩社員から指導を受ける |
ジョブローテーション | 異なる部署を経験する |
上記のようなプログラムを単独で実施するのではなく、組み合わせてスキルを伸ばせる体制を整えていきましょう。
経営層との関わり
幹部候補は、経営層との密接な関わりを通して、経営理念やビジョンを理解し、戦略的な思考力を養うことが重要です。
定期的な面談やプロジェクトへの参画を通じて、経営層の考えや経験を学ぶ機会を設けましょう。
育成効果の評価とフィードバック
育成プログラムの進捗状況を定期的に評価し、必要に応じてフィードバックやサポートを行いましょう。
360度評価などを活用して、周囲からの客観的な意見を取り入れることも有効です。効果的な幹部候補を育成するためには、体系的な手順と継続的な評価・フィードバックが不可欠です。
企業は、自社の経営戦略や人材育成方針に合わせて、適切な育成プログラムを策定・実施していきましょう。
まとめ
幹部候補の育成は、企業の成長と発展にとって不可欠です。スキルや資質のある人材を選定し、育成していく必要があります。
経営者や人事担当者、チームリーダーなどは、本記事の内容を元に、適切な人材を見極め、組織の将来を担うリーダーを育てる参考にしてください。
優秀な人材は、最初から全てが揃っているわけではありません。適切な育成環境を与えれば、大きく成長できます。
未来への投資として、幹部候補の育成に力を注ぎましょう。