テレワークや働き方改革などで企業の働き方が変わってきている中、「マイクロマネジメント」が問題になってきていることは、ご存知でしょうか。
「マイクロマネジメント」は組織体系の一種であり、人によっては無意識のうちにマイクロマネジメントを部下に行ってしまっている場合も少なくありません。
そこでこの記事では、マイクロマネジメントの定義や事例を皮切りに、マイクロマネジメントは企業にとって悪影響を及ぼしてしまうのか、解説していきたいと思います。
この記事を読めば、マイクロマネジメントの知識はもちろん、マイクロマネジメントとの上手な付き合い方が理解できますので、部下へのマネジメント方法に不安を抱えている人は、ぜひ最後までご覧ください。
マイクロマネジメントの定義とは?
「マイクロマネジメント」とは、部下の行動を細部まで管理することで、過干渉なマネジメントをしている状態のことを指します。
失敗を恐れてしまったり、責任感を強く持ちすぎている管理職が行ってしまいがちなマネジメント方法で、きちんと対策をしないと、業務効率に悪影響を及ぼしてしまうだけでなく、ハラスメントに繋がってしまう恐れもあります。
テレワークの普及や中途採用の増加により、部下を教育することの重要性が増していることもあり、管理職のマイクロマネジメントは増加傾向にあります。
マクロマネジメントとの違いとは?
マイクロマネジメントと似たような言葉で、「マクロマネジメント」というものがあります。
マクロマネジメントとは、部下に必要最低限度の指示や業務の確認を行い、部下にある程度の権限を持たせるマネジメントのことを指します。
マイクロマネジメントと逆の意味を持つ言葉ですので、覚えておくと便利なビジネス用語になるでしょう。
【具体例付き】マイクロマネジメントの特徴を大公開
ここでは、マイクロマネジメントの特徴を具体例と合わせて紹介します。
意図せずにマイクロマネジメントをしているケースは多くあり、以下の特徴や具体例を実際に行っている場合は、部下にマイクロマネジメントをしている可能性が高いです。
意図していないマイクロマネジメントは、メリットよりもデメリットが大きくなってしまうことがほとんどであり、最悪の場合ハラスメントの原因にもなってしまうことがあります。
上司や管理職の方は、以下の特徴や具体例に当てはまっているかどうか、確認してみると良いでしょう。
過度に業務に干渉してしまう
部下に細かく指示を出しすぎていたり、部下の行動を過度に確認しすぎてしまうと、意図せずマイクロマネジメントをしている可能性が高いです。
以下の行動をしている人は、過度に業務に干渉している恐れがありますので、注意しましょう。
- 部下の居場所を常に把握しようとする
- メールのCCに自分の名前を入れるように強制する
部下の意思決定に介入しすぎてしまう
業務に細かく口を出して、部下に意思決定させないようにするのも、マイクロマネジメントの可能性があります。
以下の行動をしている人は、部下の意思決定に介入しすぎている恐れがありますので、注意しましょう。
- 企画書や提案書の内容を指定する
- 業務のやり方や優先順位を強要する
部下のミスをいつまでも責めすぎてしまう
部下のミスを指摘することは大切な教育の一環ですが、ミスの追及などを過剰に行いすぎてしまうと、マイクロマネジメントになる可能性があります。
以下の行動を行っている人は、部下のミスに対する対応の仕方が過剰になっている可能性があるので、注意しましょう。
- 電話のかけ方や対応の仕方に、細かく注意する
- 些細なミスを必要以上に責めすぎてしまう
コミュニケーションを取ろうとしない
部下とコミュニケ―ションを取らず業務内容を決めすぎている場合、意図せずにマイクロマネジメントをしている可能性があります。
以下の行動をしている人は、部下とのコミュニケーションが不足している場合がありますので、注意しましょう。
- 業務内容を全て指示して、それ通りに行うことを一方的に言いつける
- 会議や報告のタイミングを一方的に決めてしまう
マイクロマネジメントが引き起こす悪影響とは?
ここでは、マイクロマネジメントが引き起こす悪影響について解説します。
マイクロマネジメントを上手く活用できている場合、自身のノウハウを部下に上手く伝えることで、仕事の結果に悩んでいる社員が、解決するきっかけを与えることもできます。
ただ現実問題として、マイクロマネジメントを活用することは難しく、多くの場合で以下のようなデメリットを引き起こす原因になってしまいます。
もし、仕事上で以下のような課題に悩んでいることがあれば、自分や周りの人がマイクロマネジメントを誤った方法で行っていないか、見直してみることをおすすめします。
組織の役割分担が上手くできなくなる
管理職が部下にマクロマネジメントをしていると、部下の業務に注力しすぎてしまうあまり、本来の役割である目標達成のための戦略や目標設定が疎かになってしまう恐れがあります。
また、部下の育成を妨げてしまうと、将来の管理職層の人材確保が不十分になり、将来的な組織の役割分担にも影響が出てしまう可能性もあります。
部下の成長やキャリアアップの機会を妨げてしまう
上司がマイクロマネジメントを行うことで、部下の決断力や業務に対する行動力が向上せず、結果的に部下の成長やキャリアアップを阻害してしまう可能性があります。
さらに、上司がマイクロマネジメントを常に行っていると、部下が指示待ちを基本姿勢にしてしまう傾向があるため、生産性や業務効率を悪化させることにも繋がってしまいます。
信頼関係を築くことが難しくなる
上司や管理職がマイクロマネジメントを部下に行うことで、部下の考え方や性格によっては、仕事を一人で任されないあまり、上司から信頼されていないと勘違いしてしまい、信頼関係を築くことが難しくなってしまいます。
さらに、人によっては仕事にやりがいを感じられなくなってしまう原因になり得るので、最悪の場合仕事を辞めてしまい、企業の離職率の増加にも繋がってしまうでしょう。
マイクロマネジメントとパワーハラスメントの違いとは?
結論から言うと、マイクロマネジメントはマネジメント方法の一種であり、適切に行えば組織や部下にメリットを与えることも可能ですので、部下に悪影響のみを与えてしまうパワーハラスメントとは違うものになります。
ただ、マイクロマネジメントを意図せずに行ってしまうと、パワーハラスメントに繋がるような行動を取ってしまうことが多く、人によってはマイクロマネジメントをしていたつもりでも、パワーハラスメントをしてしまっていたというケースが起きてしまいます。
パワーハラスメントの定義や事例を理解することで、マクロマネジメントからパワーハラスメントに繋がってしまう対策を取れますので、部下との接し方に少しでも不安がある人は、以下のポイントを確認しておくと良いでしょう。
パワーハラスメントとの定義とは?
「パワーハラスメント(パワハラ)」は、職場において地位や権力を利用して行われる嫌がらせやいじめのことを指します。
パワハラは部下や同僚の精神的・肉体的な健康に悪影響を及ぼし、職場環境を悪化させる原因となるため、法律に基づいて対応する企業が増えています。
さらに求職者や社員が、ライフワークバランスを重視する動きが加速していることからも、在宅ワークなどを通して、より対策に力を入れている企業も多いです。
パワーハラスメントの具体的
パワーハラスメントの具体例として、以下の行動が挙げられます。
- 無理な業務命令
- プライバシーの侵害
- 暴言や侮辱を行う
- 仲間外れや無視をしている
パワーハラスメントを行ってしまうと、部下の離職に繋がってしまうので、絶対に行わないようにしましょう。
マイクロマネジメントを改善するポイントとは?
ここでは、マイクロマネジメントを改善するポイントについて、いくつか紹介いたします。
どのポイントも簡単に導入できるものがほとんどですので、マイクロマネジメントからなかなか脱せずに困っている人は、実践してみると良いでしょう。
SMARTの法則を活用してみる
「SMARTの法則」とは、ジョージ・T・ドラン(George T. Doran)が『There’s a S.M.A.R.T. way to write management’s goals and objectives』の著書で提唱している、目標設定の方法です。
以下の5つのポイントから構成されており、実践することで自身が目標達成のために行う行動を明確にできます。
- Specific(具体性)
- Measurable(計量性)
- Assignable(達成可能性)
- Relevant(関連性)
- Time-related(期限)
報告するタイミングや内容のルールを決めておく
マイクロマネジメントの対策として、業務の報告に関するルールを決めておくことも重要です。報告する回数や報告書の手直しする範囲をあらかじめ決めておくことで、業務への過干渉を対策できます。
なお、ルールを決める際には、必ず部下の意見を取り入れるように心がけておきましょう。
オープンクエスチョンができるようにコミュニケーションツールを導入する
「オープンクエスチョン」とは、はい・いいえのような決まった回答形式ではなく、自由に内容を発信できる回答形式を指します。
オープンクエスチョンを採用することで、部下の意見を取り入れやすくなり、マイクロマネジメントへの対策に繋がります。
さらに、ChatworkやSlackなどのコミュニケーションツールを使用することで、部署や企業全体でのコミュニケーションが可能になり、風通しの良い業務体制を作ることも可能です。
マイクロマネジメントを活用する場面を考える
マイクロマネジメントを活用するタイミングを限定することも、ハラスメントの対策として有効です。
事業の最終段階の確認など、ある一定の業務フローのみマイクロマネジメントを活用することで、マイクロマネジメントのメリットを引き出せます。
マイクロマネジメントを改善した企業例
ここでは、マイクロマネジメントを改善した企業例を紹介します。組織全体でマイクロマネジメントに悩んでいる場合は、参考にしてみると良いでしょう。
株式会社ノヴィータ
マーケティング事業を行っている株式会社ノヴィータでは、「つまずき改善シート」を導入し、マイクロマネジメントの対策を行っています。
「つまずき改善シート」とは、部署内のメンバーに以下の要点をスプレッドシートに記入してもらい、月1回ほど共有する時間を設ける取り組みです。
- 自身が考えている課題
- 解決策
- 相談したいこと・アドバイス
- 実行してみてどうだったか
上記の項目を15分ほどの短い時間で共有することで、部署全体のオープンな姿勢で業務に取り組む意識が生まれました。
その結果、閉鎖的なコミュニティでのやり取りが少なくなり、上司のみが情報を握り、マイクロマネジメントを意図せず行ってしまう事態を防ぐことに成功しました。
【まとめ】マイクロマネジメントに注意して、健全な組織運営を目指そう
この記事では、マイクロマネジメントに関するトピックスを幅広く解説しました。
マイクロマネジメントを意図せず行ってしまうと、生産性が低下してしまうのみならず、パワーハラスメントの原因になってしまうことが多くあります。
仕事熱心な人ほど無意識にマイクロマネジメントをしてしまっている傾向がありますので、マイクロマネジメントの定義や対策を意識して、業務に取り組んでみてはいかがでしょうか。