中小企業が初めて展示会に出展するにはどうすればいいか?応募から出展、終了後のアフターフォローまでを解説

コロナ禍が終息した昨今、ネットではなくリアルの展示会に出展する製造業やサービス業の会社が増えています。

展示会出展は時間もコストもかかりますが、人と人が直接コミュニケーションできるので、新規開拓や新製品・新サービスのPR等につながることが大きな魅力です。

ただ、今までに一度も展示会に出展したことがない場合、「本当に自社で出展できるのか?」という不安があるかと思います。

そこでこの記事では、展示会出展の機能、出展に関する手順、さらに私自身が実際に展示会出展した時に気付いた注意点をお伝えします。記事を読み、展示会出展に関する時間ロスやトラブルの事前回避に役立てていただけますと幸いです。

目次

展示会における出展ブースの機能

展示会の出展ブースは、一般的な小売店に近い機能が求められます。ここでは小売店の機能を援用して、展示会における出展ブースの機能について考察します。

  • 訴求機能
  • 誘導機能
  • 選択機能
  • 演出機能
  • 管理機能

訴求機能

最初に考えることは、通路を歩いている来場者に自社の出展ブースに注目させ、興味を持ってもらうことです。

小売店であれば、道路を歩いている通行者が店頭看板やショーウィンドウを観て惹かれることになります。展示会の場合、出展ブースの大きさに違いがあっても、同じような規格で区画されています。

興味を持ってもらうためには、ディスプレイ機器を設置してインパクトのある映像を流したり、自社技術を使って動きのあるデモ機器を制作して配置したりすることが考えられます。つまり、来場者に自社の出展ブース前で停止してもらうことが重要になります。

誘導機能

次に考えることは、自社の出展ブース前で停止した来場者をブース内に引き入れて、展示している商品等へアプローチさせることになります。

出展ブース前の魅力的な存在、ブース内の見通しや通路幅、適正な商品配置によって来場者をスムーズに誘導します。

来場者には「どのような商品・サービスなのか?」と思ってもらい、できればワクワク感を持ってもらえればベストです。

選択機能

来場者をブース内に引き入れることができたのであれば、次は展示している商品について検討します。

ここでは「見やすく」「選びやすく」「手に取りやすい」ように配置・陳列し、ブース内のスタッフに話しを聞いてみたいと思わせるようにします。

自社で展示会出展が決定後、できれば複数の展示会に来場して観察することをお薦めします。

演出機能

来場者が陳列商品を手に取り、内容説明を聞いたり、質問したりすることを促進するために、出展ブース内の雰囲気を良くしていくことが求められます。

まず、色彩について検討します。例えば、会社のコーポレートカラーが青色であれば、出展ブースを青色もしくは青色系統で統一することも有りです。もしくは2色を使って躍動感を出すことも面白いかもしれません。

ちなみに、私が展示会に出展した時には、緑色とオレンジ色の2色を使って出展ブースを作りました。オレンジ色のシャツと緑色のネクタイを締めて、自ら販促ツールになりました。また、照明については、展示会で設定されているので大きく変えることは難しいです。

ただ、陳列商品に部分照明を行うことで見映えを良くすることは考慮してください。

管理機能

出展ブースが「表」であれば、「裏」に当たる部分です。小売店で言えば、商品在庫を置いているバックヤードや事務室に該当します。

展示会ではスペースが限られるため、個別にバックヤードを与えられることはありません。よくあるケースとしては、出展ブースの端に自社持ち込みのパソコンを設定して、来場者情報を入力したり、メールのやり取りをしたりしています。

また、出展ブースで対応するスタッフの荷物についても目立たない場所にまとめていることが多いです。大規模会場であれば、コインロッカーがありますので、盗難防止のために利用してください。

展示会出展の手順

展示会出展に関する手順を自社と展示会主催者との関連を含めてお伝えします。展示会によって多少の違いがあるかもしれませんが、大枠の流れを把握できればOKです。

1.展示会出展に関する検討と決定

まずは様々な展示会情報をネットで収集し、自社の商品・サービスに合う展示会を探索します。候補になる展示会を選定して、最終的にひとつに絞り、出展を決定して応募します。

その後、展示会出展に関わる内容を決めていきます。誰をターゲットにしているのか。どの商品・サービスを展示するのか。その商品・サービスはどのような形で展示するのか。予算はどれくらいにするのか。応援も含めて展示会に関わる要員は何人にするのか。什器等の搬入・搬出や要員移動に使う自動車の調達はどうするのか。つまり、展示会計画を作るということです。

応募した後、展示会主催者から展示会説明会(リアルもしくはリモート開催)の案内が届くと思います。この説明会で出展に関するガイドブック、会場平面図、出展者認識票、自動車の通行証といった資料が配布され、内容説明があります。特に「出展に関するガイドブック」は、自社の展示会計画にリンクしますので、しっかり話しを聞いておいてください。

なお、展示会主催者がPR用のチラシやパンフレットを作るために、展示内容に関する文章を依頼してきます。文字数に制限がありますので早めに作成してください。

2.出展に関わる準備

ここでは応募した際に開催までにやるべきことをスケジュール化し、展示会説明会を受けた後は「出展に関するガイドブック」に書かれているスケジュールとすり合わせします。さらに自社の展示会計画を具体化していきます。

展示会計画の主な内容として、陳列する商品・サービスを決定。商品の種類やサイズによって陳列数が決まります。次に出展ブースの平面レイアウトを作ります。間口と奥行きは応募時に分かっていますので、このスペースの中で具体的なレイアウト図を設計します。

さらにレイアウト図に合う陳列什器とPR用ディスプレイ機器を選定。出展ブースの立体的なイメージを作ります。展示会によって違いはありますが、陳列什器とPR用ディスプレイ機器等はレンタルできるはずです。「出展に関するガイドブック」の中に詳細が書かれていると思いますので確認してみてください。勿論、自社独自でレンタルしてから会場に運んでも構いません。

上記の取り組みと並行して、掲示物(ポスター等)と配布物(チラシ・パンフレット等)を作成します。特に新商品や新サービスであれば、掲示物や配布物は展示会終了後も使うことを考慮して作成してください。

3.展示会期間中の対応

展示会前日に陳列什器や機器類、展示商品等を搬入します。自動車で展示会場に行く場合は、展示会説明会で配布された「自動車の通行証」を忘れないように。

「出展に関するガイドブック」の中で展示物の荷捌場が設定されている場合は、その指示に従って活用します。搬入時間が決められていると思いますので、確保したスタッフで早めに作業してください。

展示会によっては、出展者だけ参加できる交流会が開催されることがあります。他社の方々と名刺交換することでビジネスにつながることもありますので、積極的に参加してください。

展示会計画の中で決めていると思いますが、出展ブースのリーダーはスタッフのマネジメントを適切に行ってください。日常の仕事とは違う緊張感がありますが、時間の経過と共に慣れていくと思います。

4.撤収とアフターフォロー

展示会終了後、陳列什器や機器類、展示商品等を段ボールに梱包して、会場から搬出します。「出展に関するガイドブック」に書かれているルールを守りながら、速やかに行動します。

注意点として、荷物用エレベーターが混むこと、荷物用エレベーターから遠い場所に自動車を停めていると、往復に時間が掛かることが挙げられます。

搬出終了後、会社に戻ってから最優先すべきことは、名刺交換した来場者に手書きのお礼状を送ることです。

例えば、3日間の展示会であれば、初日の来場者分は初日に、2日目の来場者分は2日目に、というようにできれば当日に送ってください。宛名は印刷文字で構いませんが、本文は来場者と話した内容を思い出して手書きすることが重要です。何でも簡略に済ます昨今、手間のかかる手書きお礼状そのものが、他社との「差別化」につながるはずです。

後日、展示会に参加したメンバーで打ち上げを開催することをお薦めします。展示会であったエピソードや出来事を話題にして盛り上がり、メンバー同士の一体感をつくることができるはずです。また、こうしたエピソードの中から次の展示会のヒントになるアイデアが隠されているかもしれません。ともかくリラックスできる場を作ってみてください。

展示会出展で注意するポイント

実際に展示会に出展してみないとわからないことがあります。実際に私が出展した中で、注意すべきポイントを3点お伝えします。

  • スタッフの人数と時間は余裕を持たせること
  • 展示会当日の食事を考慮しておくこと
  • 搬入・搬出のためのツール等は余分に準備すること

スタッフの人数と時間は余裕を持たせること

応援も含めたスタッフの確保と配置は、事前に計画していると思います。初めての展示会出展では、経験値がなく慣れていません。当初は計画よりも少し多めの人数にするほうが無難です。

また、展示会期間中よりも事前準備に相当な時間が掛かります。締め切りギリギリで対応するのではなく、余裕を持った時間設定を行ってください。私の場合、個人事務所なので応援者もなく、全て私一人でやっていました。余裕のある時間設定にしたのですが、それでもギリギリで課題や締め切りをクリアしていた記憶があります。

展示会当日の食事を考慮しておくこと

大都市にある大型施設であれば、会場内に複数の飲食店があります。ただ、お昼時はどこも満席になります。出展ブースにいるスタッフが交代でお昼休憩するにしても、行列に時間が取られてしまい、スムーズに交代できない可能性があります。

事前にお弁当を準備しておけば、時間を無駄にすることなくお昼休憩が取れるはずです。私の場合、小型のホワイトボードに「お昼休憩中」と書いて、施設内の飲食店に行きましたが、どこも満席でした。時間が掛かりそうだと判断し、会場を出てから通りにある飲食店に行き、お昼を取りました。

搬入・搬出のためのツール等は余分に準備すること

私の場合、ツールのリストを作ってチェックを実施。余分に準備していたので大きな問題はなく、スムーズに搬入・搬出することができました。

セロテープ、ガムテープ等のテープ類、ゴミ袋類、プラスとマイナスのドライバー、マジック等の筆記用具、カッターやハサミ、荷造りのヒモ等は余分に準備します。作業する中で紛失することがあるからです。ポスターをセロテープで壁に直接貼り付けるのは演出上、問題ありです。アルミケースに入れて、吊り下げ金具に引っ掛けて掲示することをお薦めします。

ディスプレイ機器を使う場合、機器とコンセントをつなぐ延長コードの長さは、出展ブースの平面図を観て計算していると思いますが、その想定よりも長めにしてください。寸法が足らないとディスプレイ機器が使えなくなるからです。また、運搬用の台車、飾り付け用の脚立も忘れずに自動車に積み込んでください。

まとめ

 

ここまでの内容をまとめます。展示会における出展ブースの機能としては、①訴求機能、②誘導機能、③選択機能、④演出機能、⑤管理機能、があります。

展示会出展の手順としては、①展示会出展に関する検討と決定、②出展に関わる準備、③展示会期間中の対応、④撤収とアフターフォロー、になります。

そして、展示会出展で注意するポイントとしては、①スタッフの人数と時間は余裕を持たせること、②展示会当日の食事を考慮しておくこと、③搬入・搬出のためのツール等は余分に準備すること、が挙げられます。

では、展示会を楽しみながら、新規開拓を行い、売上アップにつなげてください。

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この記事を書いた人

中小企業診断士として1997年に登録。1999年に個人事務所を立ち上げて、現在も運営中です。コンサルタント歴は25年以上。中小企業のマーケティングに関するコンサルティングを行っています。また、国や自治体の中小企業支援機関でアドバイザーを長く務め、起業家育成にも貢献しました。

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