ティール組織をわかりやすく解説!全体像から組み立て方のステップまで

ティール組織とは、従来の命令型組織から脱却し、従業員一人ひとりの自律性と創造性を引き出し、組織全体を進化させていく新しい組織形態を指します。

近年、世界中の企業でティール組織への移行が注目されています。高い従業員満足度、組織の持続的な成長などさまざまなメリットをもたらすことが期待されています。しかし、ティール組織を成功させるためには、多くの課題を克服しなければなりません。

本記事では、ティール組織の全体像から組み立て方のステップまで、わかりやすく解説します。これからの時代に求められる組織変革のヒントとして、参考にしてください。

目次

ティール組織とは?従来の組織との違い

ティール組織とは、従来のヒエラルキー型組織とは一線を画す、革新的な組織形態です。2014年にフレデリック・ラルー氏によって著書「Reinventing Organizations」で提唱され、近年注目を集めています。

従来の組織では、明確な命令系統と管理体制に基づき、トップダウンで意思決定が行われます。一方、ティール組織では、個々の社員が自律的に行動し、自らの意思で意思決定を行う点が特徴です。

具体的には、以下の点が従来の組織との大きな違いです。

項目ティール組織従来の組織
意思決定の主体上司、経営者上司、経営者
組織構造フラット型、ネットワーク型ピラミッド型
目標組織の存在意義の追求利益追求
リーダーシップサーバント型命令型
コミュニケーション双方向トップダウン
人材マネジメント自己実現支援成果主義
評価制度業績、目標達成貢献度、成長

ティール組織は、近年注目を集めている組織形態ですが、まだ多くの企業が導入には至っていません。しかし、先行き不透明な現代社会では、変化に柔軟に対応できるティール組織は、今後ますます重要性を増していくと考えられます。

5つの進化段階

フレデリック・ラルー氏は著書『ティール組織』の中で、組織の進化を5つの段階に分類しています。

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レッド組織
(衝動型)
リーダーを中心に短期的意思決定と迅速な行動が求められます。
明確なルールや手順はなく、力関係に基づいて運営されます。
アンバー組織
(順応型)
役割分担と明確なルールに基づいて運営されます。
リーダーは権限を持ちますが、メンバーもある程度自律的に行動できます。
オレンジ組織
(達成型)
目標達成と効率性を重視します。
明確なビジョンと戦略に基づき、ヒエラルキー構造で運営されます。
グリーン組織
(多元型)
個々の社員のエンゲージメントとチームワークを重視します。
合議制やプロセス重視が特徴です。
ティール組織
(進化型)
生命体のような組織形態で、全体性、進化する目的、自主経営を重視します。
リーダーは存在しますが、意思決定は自律的に行われます。

これらの段階は、必ずしも順番通りに進化していくわけではありません。また、すべての組織がティール組織に到達するわけではありません。

しかし、それぞれの段階の特徴を理解すれば、自社の組織がどこに位置し、どのように進化していくべきなのかを考えられます。

3つの要素

ティール組織は、以下の3つの要素を基盤として成り立っています。

セルフマネジメント(自主経営)

ティール組織では、従来のようなトップダウン型の意思決定ではなく、個々の社員が自律的に意思決定を行い、自発的な行動が求められます。そのため、社員一人ひとりが高い責任感と主体性を持ち、組織全体の目的を理解していることが重要です。

ホールネス(全体性)

ティール組織では、個々の役割だけではなく、組織全体や社会とのつながりを意識した働き方が重要です。そのため、社員同士がオープンなコミュニケーションを交わし、相互に学び合い、協力しながら仕事を進めることが求められます。

エボリューショナリーパーパス(進化する目的)

ティール組織は、単なる利益追求ではなく、社会や環境に貢献するような存在意義を持つことを目指します。そのため、組織の目的を明確に定め、社員一人ひとりが目的を共有する必要があります。

ティール組織を目指す企業は、これらの要素を意識しながら、組織文化や仕組みを改革していくことが重要です。

ティール組織のメリット

ティール組織は、従来の組織とは異なる特徴を持ち、以下のようなメリットが挙げられます。

  • 従業員の主体性と創造性を引き出す
  • 変化に対応しやすい組織作り
  • 従業員のエンゲージメントとモチベーションの向上
  • 顧客満足度向上と収益拡大

ティール組織は、多くのメリットをもたらします。近年、ティール組織を導入する企業が増加しているのも、これらのメリットが注目されているためです。

ティール組織のデメリット

ティール組織は多くのメリットを持つ一方で、いくつかのデメリットも存在します。主なデメリットは、以下のとおりです。

  • 導入の難易度が高い
  • 意思決定に時間がかかる
  • リスク管理が難しい

ティール組織は、従来の組織とは大きく異なる新しい組織モデルです。多くのメリットを持つ一方で、デメリットも存在するため、導入には慎重な検討が必要です。

ティール組織の成功事例

ティール組織を導入して成功した企業の事例を3つご紹介します。

事例1: ネットプロテクションズ社

ネットプロテクションズは、国内市場シェアトップクラスの後払い(BNPL)決済サービスを提供する会社です。2018年からティール型組織の実現を目指し、さまざまな取り組みを実施しています。

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役職制度の廃止従来の役職制度を廃止し、フラットな組織体制を構築すべての社員が対等な立場で意思決定に参加できるよう、権限を分散化
目標管理制度「Natura」の導入個人の成長と貢献を重視する目標管理制度「Natura」を導入「Natura」では、社員一人ひとりが目標を設定し、定期的に進捗状況を共有・評価し、相互の成長を支援
自律的な事業運営社員自らが企画・立案したプロジェクトチームによって運営
働き方改革勤務時間や場所を自由に選択テレワーク制度も積極的に活用し、ワークライフバランスの向上を支援

ネットプロテクションズ社の取り組みは、ティール組織が現実的な経営課題を解決し、持続的な成長を達成できることを示しています。

事例2: ザ・モーニング・スター・カンパニー

ザ・モーニング・スター・カンパニーは、アメリカを拠点とする世界最大のトマト加工会社です。同社は、ティール組織の代表的な成功事例として知られており、その革新的な経営手法は世界中から注目を集めています。

従来の管理職中心の組織から、社員一人ひとりが意思決定権を持つティール組織へと移行したザ・モーニング・スター・カンパニーは、驚くべき成長を遂げました。従業員数は400人以下でありながら、年商63億円、アメリカのケチャップやトマトソース市場のシェア30%を獲得しています。

事例3: オズビジョン社

オズビジョン社は、ポイントモール「ハピタス」やトークンペイメント「Pollet」などを運営する、ショッピングテイメント企業グループです。

オズビジョン社のティール組織は、従来の階層型組織とは異なり、社員一人ひとりが自律的に行動し、自らの役割と責任を明確に持ちます。

同社のユニークな点は、利益を追求するのではなく、顧客と社員の幸せを追求する「自己実現型組織」を目指していることです。具体的には、社員一人ひとりが自身の成長と自己実現を追求できる環境を整備し、顧客満足度の向上、社員のモチベーション向上、業績向上を実現しています。

ティール組織の組み立て方

ティール組織の組み立て方を4つのステップにわけてみていきましょう。

STEP
ティール組織の理念とビジョンを明確にする

ティール組織の土台となるのが、「存在目的」と「進化する目的」を明確にした理念とビジョンです。

理念とビジョンを明確にするためのポイントは、以下のとおりです。

  • 関係者全員が参加して、意見交換を重ねる
  • 組織の強みや弱み、そして可能性を踏まえる
  • わかりやすく、共感しやすい言葉で表現する
  • 定期的に見直し、必要に応じて修正する

理念とビジョンを明確にするのは、簡単な作業ではありません。しかし、時間をかけて丁寧に進めることで、組織の基盤となり、ティール組織への第一歩を踏み出せます。

STEP
組織構造をフラット化し、権限を分散させる

ティール組織では、フラットな組織構造を構築し、権限を分散させることが重要です。これは、個々のメンバーが主体性を発揮し、自律的に行動できる環境を作るためです。

組織構造をフラット化し、権限を分散させるためのポイントは、以下のとおりです。

  • チーム制を導入する
  • 意思決定の権限を現場に委譲する
  • 情報共有を徹底する
  • 積極的なコミュニケーションを促進する

組織構造の変革は、簡単ではありません。メンバーの意識改革や、新しい仕組みの導入など、さまざまな課題を乗り越える必要があります。しかし、組織構造のフラット化と権限の分散は、組織の自律性と俊敏性を高める重要な要素です。

STEP
従業員の自主性と責任感を高める

ティール組織では、従業員の自主性と責任感を高めることが重要です。メンバー一人ひとりが主体的に考え、行動できれば、組織全体の創造性と生産性を高められます。

自主性と責任感を高めるポイントは、以下のとおりです。

  • 明確な目標を設定し、達成に向けてサポートする
  • 従業員の意見やアイデアを積極的に取り入れる
  • 成果だけではなく、プロセスも評価する
  • 権限移譲と責任付与を積極的に行う

従業員の自主性と責任感を高めることは、ティール組織の成功を左右する重要な要素です。

STEP
継続的な学習と成長を支援する

ティール組織は、変化の激しい現代社会では、常に学び続け、成長していくことが重要です。そのため、組織全体で学習と成長を支援する環境作りが必要です。具体的には、以下のようなポイントが挙げられます。

学習機会の提供社内研修や外部研修、eラーニングなど、多様な学習機会を提供する個々のニーズや興味に合わせた学習プログラムを用意する
メンタリングやコーチング経験豊富な先輩社員などが、後輩社員の学習と成長を支援する個々の課題や目標に合わせたアドバイスやサポートを提供する
フィードバックと評価個々の学習と成長を定期的に評価し、フィードバックを行う上司や同僚からのフィードバックだけではなく、360度評価などを取り入れる

継続的な学習と成長の支援は、組織の競争力強化、従業員のモチベーション向上、個々の能力開発などが期待できます。

4.ティール組織導入の注意点

ティール組織は革新的な組織形態ですが、簡単に導入できるわけではありません。導入するためには、以下のような注意点が挙げられます。

1.進捗管理を行える仕組みを作る

ティール組織では、従来のようなトップダウン型の意思決定ではなく、メンバー1人ひとりの主体的な行動が求められます。しかし、自律的な行動を促進するためには、進捗状況を把握し、必要に応じてサポートを行う仕組みが必要です。

具体的な方法としては、以下のようなものが挙げられます。

  • OKRの導入
  • 定期的なミーティング
  • プロジェクト管理ツールの活用
  • フィードバック制度の整備

組織全体で進捗管理の仕組みを共有し、実践していくことが、ティール組織を成功させるための重要なポイントです。

2.従業員の理解と協力を得ること

ティール組織を成功させるためには、従業員の理解と協力を得ることが不可欠です。そのためには、以下の点に注意する必要があります。

  • 情報共有を徹底
  • 懸念や不安の解消
  • コミュニケーションを活性化
  • 研修やトレーニングの提供

これらの点を踏まえ、従業員一人ひとりがティール組織の重要性を理解し、積極的に参加できる環境を整えることが、ティール組織を成功させるためには重要です。

3.段階的な導入と試行錯誤

ティール組織は、従来の組織とは異なるため、いきなり全面導入するのはリスクが高いです。まずは、小規模なチームや部署から段階的に導入し、効果を検証しながら組織全体に広げていくことをおすすめします。

また、ティール組織は完璧な状態で最初から運用できるわけではありません。試行錯誤をしながら、組織に合った仕組みを作り上げていくことが重要です。

具体的には、以下のようなポイントが挙げられます。

  • 小規模なチームから導入
  • 既存の組織と並行して運営
  • 効果を検証しながら改善
  • 長期的な視点

ティール組織は、時間をかけてゆっくりと育てていくものです。焦らず、着実に取り組んでいきましょう。

4.外部からのサポートを活用

ティール組織は、従来の組織とは大きく異なるため、導入には専門知識や経験が必要です。そのため、外部からのサポートも積極的に活用しましょう。

具体的には、以下のようなサポートがあります。

  • コンサルタント
  • 研修機関
  • コミュニティ

外部からのサポートを活用する際には、信頼できるパートナーを選ぶことが重要です。複数の業者を比較検討し、実績や費用などを比較検討しましょう。

また、外部からのサポートに頼りすぎず、組織内部で主体的に取り組むことも重要です。外部からのサポートは、あくまでも導入を成功させるための補助的な手段であることを忘れないようにしましょう。

まとめ

ティール組織は、従来の命令型組織とは異なり、メンバー1人ひとりが自律的に行動し、組織全体を進化させていく組織形態です。ティール組織は、さまざまなメリットが期待されています。

しかし、ティール組織を成功させるためには、多くの課題を克服する必要があります。従業員の理解と協力を得ること、段階的な導入と試行錯誤、外部からのサポートの活用などが重要です。

ティール組織は、まだ発展途上の組織形態です。しかし、これからの時代に求められる組織であることは間違いありません。ティール組織の理解を深め、組織変革のヒントとして活用していきましょう。

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この記事を書いた人

企業の管理部に3年在籍。
人事やマーケティングなどの業務にも携わった経験を活かし専門的な用語や知識をわかりやすく解説することを心がけています。
行政書士試験にも合格しており、行政書士補助者として起業家サポートを業務に携わった知識と経験もあるため、補助金や助成金、マネジメントについても熟知しています。
これまで培った知識や経験を元に、経営者の方に役立つ情報をお届けします。

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