ベンチャーとスタートアップの違いとは?それぞれの特徴、メリットを専門家が解説

2000年代からIT関連の新しい会社のことを「ベンチャー」と呼ぶことが多くなり、メディアでも多く取り上げられていました。近年では「スタートアップ」と呼ばれる会社が登場しており、政府も2022年をスタートアップ創出元年と銘打ち「スタートアップ5か年計画」を打ち出してその育成に力を入れています。

「ベンチャーもスタートアップも同じようなもの」と、私は思っていました。数年前からスタートアップの経営支援をする中で、見えている景色も環境も、目指している場所も想像と違うことに驚きました。

”似て非なるもの” ベンチャーとスタートアップの特徴・違いを解説します。

目次

定義

ベンチャーもスタートアップも会社であることには変わりありませんが、その資本金や従業員数、業績等により明確な定義があるわけではありません。

中小企業が多いですが、最近は「メガベンチャー」という大企業も登場しており、一概に全てが中小企業とは言えない状況になっています。

定型的・定量的に線引きができない両者を定性面から定義付けしたいと思います。

ベンチャーとは

元々は1970年代初頭に「ベンチャー・ビジネス」という和製英語が提唱されたことが始まりと言われています。

英語の”Venture”(冒険的、危険を冒して、思い切って)の意味するとおり、冒険性や危険性の伴う新しいビジネスに挑戦することを指し、日本ではそれを実行する企業や起業家を総称して「ベンチャー起業」と定義しています。

海外のビジネス界では、単に英語でVentureというとVenture Capital(ベンチャーキャピタル)を指し、投資を行う側の会社の意味になります。

スタートアップとは

元々はアメリカ、サンフランシスコの半導体メーカーやソフトウェア・IT企業が集積するシリコンバレーで使われるようになったことが始まりと言われています。

英語の”Start Up”(起動する、始める、立ち上げる)の意味するとおり、革新的な先端技術を土壌に新しく設立されたばかりの企業を総称して「スタートアップ企業」と定義しています。

スタートアップはアメリカで生まれた言葉で、ほどなく日本に入ってきた外来語です。

両者の類似点とは

類似点は以下の3つに要約できます。

●新しい会社であること

●新しい商品・サービス・事業であること

●会社の規模が小さいこと

これらの共通項からベンチャーとスタートアップは同じ企業体として捉えられ、私たちの認識の上で”同じようなもの”として混同されています。

主な特徴と違い

ここからは、代表的な特徴・違いである「ビジネスモデル」「出口戦略」「資金調達方法」について詳しく見ていきます。

ビジネスモデル

大きな違いは、既存ビジネスモデルなのか、新しいビジネスモデルなのかという点です。

ベンチャーが目指すものは「持続的イノベーション」です。

既存のビジネスモデルを元として、既に存在する市場の中で持続的なイノベーションを繰り返し、市場に新しい製品・サービスを供給することでビジネスモデルをアップデートしていきます。

財政基盤が確立できると既存事業と親和性の高い領域に投資・進出し、継続的に事業を拡大することで株主に利益を還元します。

一方、スタートアップが目指すものは「破壊的イノベーション」です。新規性の高いアイデア・技術を元に、今までの常識を覆す新たな価値観を生み出し、ビジネスモデルそのものを創出します。

それにより新たな市場を生み出し、市場シェアを一気に支配します。短期間の内に事業を急激に拡大することで投資家に対し桁違いの利益を還元します。

出口戦略

出口戦略(EXIT)には大きく分けて2つの方法があります。

IPO(新規株式公開)
証券取引所に上場し株式を公開、外部に譲渡することでキャピタルゲインを得る

M&A(企業の合併・買収)
成長させた企業を売却することで多額の資金を手に入れる

ベンチャーの場合は持続的な成長を目指すため、長期的な戦略により主にIPOを目指します。上場したあとも株式を売却せずに経営陣もそのままで事業を継続することが多いです。その意味では、明確な出口戦略は存在しません。

一方スタートアップは、起業段階から出口戦略を意識します。短期間に急激な成長をすることで、株価・企業価値・時価総額を高め、IPO時のキャピタルゲインの増大、M&A時の売却益の増大をゴールとしています。

資金調達方法

主な資金調達方法は2つあります。

デット
銀行借入等の負債に該当する融資で元本の返済と金利の支払いが必要

エクイティ
株式を発行して資金を調達する方法で返済義務がなく、出資者は株主となる

ベンチャーは既存のビジネスモデルを元に着実な成長を目指すため、初期段階から一定の売上・収益が見込めます。収益があると返済と金利の支払いに対する信用が担保できるため、デットを利用した資金調達が可能です。

一方スタートアップは初期段階での売上はほぼなく、技術開発・製品開発に投資することがほとんどです。

そのため、銀行からの融資はほぼ不可能です。スタートアップは、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家(創業まもない企業に出資する投資家)など企業の成長に伴うキャピタルゲインに期待する投資家から資金調達を行います。

メリットとデメリット

次に、ベンチャーやスタートアップで「働く場合」と「出資する場合」に分けてメリットとデメリットを解説します。

働く場合

メリット

リモートワークやフレックス制を積極的に取り入れている企業が多く、比較的自由な働き方ができます。
また、上司や経営陣との距離が近く、風通しのよい職場と感じられるのではないでしょうか。
年功序列ではなく実力や結果で評価されるため、やりがいを持って仕事をすることができ、自分の仕事が会社の業績と直結するため有能感を持つことができます。

デメリット

社員数が少ないためハードワークになりやすいです。
また責任も大きいためプレッシャーを感じることが増えます。事業戦略や体制を方向転換(ピボット)することもあるため柔軟なマインドセットが必要です。
教育体制や福利厚生が整っていないことも多く、安定志向の方には大きなデメリットになります。

出資する場合

メリット

革新的なサービスにより企業価値が向上すると大きなリターンを期待できます。
また、出資比率により経営に関与できるため自分の知識や人脈で直接的に応援することができる経営上の醍醐味を味わうことができます。
スタートアップ企業に投資すると「ベンチャー投資促進税制(エンジェル税制)」という税制上の優遇措置を受けられることもメリットの一つです。

デメリット

元本が保証されるわけではないため投資リスクは高いです。
未上場株式は上場株式と違って価値の流動性が高く相場価格がありません。
そのため、売却しようとしてもスムーズに売れる保証がありません。また、当然のことながら事業が頓挫してしまうリスクもあることから、出資者自身にも経営の知識や企業評価の目利きが必要となります。

まとめ

ベンチャースタートアップ
ビジネスモデル既存のビジネスモデル新しいビジネスモデル
出口戦略長期的なIPO短期的なIPOまたはM&A
資金調達方法主にデットによる調達主にエクイティによる調達

政府の「スタートアップ5か年計画」では、現状のスタートアップへの投資額8,000億円から2027年度までに10倍を超える10兆円規模まで拡大することを目標にしています。

また、将来において時価総額1,000億円超の未上場企業を100社、スタートアップ企業を10万社創出して日本をアジア最大のスタートアップハブにすることを目指しています。

こうしたことから今後のベンチャー・スタートアップ市場は大きく拡大していくと見られ、起業や投資に興味のある方にとっては有効な意思決定機会が広がっている状態だと言えます。

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この記事を書いた人

exbiz編集部は、複数のメディア運営経験を活かして、ユーザーにとって有益な情報提供することを第一にコンテンツ制作を行っています。広告代理店として培った豊富な経験と実績、ノウハウを活かして「自社マーケティングスクール」というインハウス支援サービスも展開中。

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