私はこれまでチームリーダーとして、さまざまなプロジェクトとチャレンジに直面してきました。この経験は、私にとって計り知れない学びと成長の機会でした。
そして今、マネージャー職への新たな旅立ちを前にして、私はこれまでの旅で得た知見を共有する時が来たと感じています。
私がチームリーダーだった頃、さまざまな困難や挫折を経験しましたが、それらを乗り越える中で、チームの結束力を高め、目標達成に向けて全員が一丸となる重要性を深く理解しました。
今回の記事では、これまで私が直面した課題を克服するために実践した方法や、私が見聞きし、学び他の組織でも成功できるチームビルディングのポイントをシェアします。
これからマネージャー職を始める方、あるいは現在マネージャーとして活躍している方々にとって、チームを成功へと導くためのインスピレーションとなり価値創造の一助となれば幸いです。
チームビルディングとは
「チームビルディング」とは、複数のメンバーが自分のスキルや経験などを活かしつつ、組織として目的を達成するためのチームを作り上げる手法のことを指します。
チームビルディングの必要性
現代のビジネス環境では、個々のスキルもさることながら、チームとしての結束力と効率的なコミュニケーションが成功の鍵を握っています。チームビルディングはこの両方を高めるための有効な手段ですが、実践する上で何を重視し、どのように進めればよいのかが大きな問題です。
会社、部署、家族、学校、部活、色々な集団がありますが、基本的に人は、いろんなチームの中で行動していきます。その中で、個人それぞれの能力を生かして、組織として目標達成を目指す時に大切になってくるのが「チームビルディング」です。
ここでは、実際に成果に繋がった事例などを基に、マネージャーが知っておくべきチームビルディングのポイントを3つ紹介します。
チームビルディングは環境が全て:安心な環境づくりこそ成功の鍵
1つ目の成功事例は、「チームビルディングは環境が全て」というテーマでご紹介します。仕事のパフォーマンスにおいて、スキルや経験もさることながら、その根底を支えるのは「環境」であるということが多くの研究や実験から明らかになっています。環境が整っていれば、個々の能力を最大限に引き出すことが可能となります。
しかし、攻撃的な態度、怠惰、愚痴や文句といったネガティブな要素がチーム内に存在すると、これらは集団のパフォーマンスを30~40%も下げると言われています。
ここで紹介する成功事例は環境作りによって成果が大きく変わった私の実体験を紹介します。私はチームリーダーの時に毎週の定例チーム会を行っておりました。
そこでは、先輩社員から毎回攻撃的な態度をされていることで自分含めてメンバーそれぞれがとても疲弊しておりました。
普段、メンバーと個別のやり取りをする時には、意見を出してくれるのにチーム会では最低限の報告だけで全く意見交換が行われてませんでした。
このような状態となっている原因は先輩社員からの強いプレッシャーです。
チームに破壊的要素を持つメンバーがいた場合は、いかに優れたスキルを持っていたとしても、チームから取り除くべきです。それは、チーム全体のパフォーマンスを最大化するために不可欠だからです。
私はチームのために、最初はいきなり先輩社員をメンバーから削除するのは気が引けたので、先輩のスケジュールを見て、他のメンバーだけでできる時間帯でチーム会を何度か実施しました。
その時に、各メンバーとのコミュニケーションが密にできたことを録画しておき、部長へ現状報告をした上で、今後のチーム会の進行に関して相談をしました。
そして、結果的にチーム力の向上、会社への売上向上を目指すということをしっかり伝えることで、攻撃的な先輩を取り除くことでメンバー全員が安心できる環境を整えました。
そして結果的に、密なコミュニケーションが取れるようになったことで、クライアントへの具体的な提案が通るようになり、半期の売上目標に対して150%達成することができました。
環境作りの重要性
私の実体験以外にも、環境作りがいかに大切かということがわかるダートマス大学タックのビジネススクールにて面白い実験が行われました。
MBA学生と幼稚園児をそれぞれのチームに分け、パスタとセロテープを使ってできるだけ高いタワーを建てさせる簡単なゲームをやってもらうという実験をしました。
一般的にはMBAを取得した学生が有利だと思われるでしょう。
しかし結果は驚くべきものでした。
この実験では、なんと幼稚園児のチームがMBA学生のチームに勝利しました。
ここで大切になってくるのが環境づくりです。
幼稚園児のチームは、メンバー全員が「こうしたらいいんじゃない?」「これはどうかな?」「いいと思う!それで行こう」と言う形で分け隔てないコミュニケーションで連携を取ることができました。
一方で、MBA学生のチームはそれぞれの個人の主張が強いがために、全く意見が纏まらずチームワークを発揮することができませんでした。
この実験から得られる教訓は、個々のプランや能力よりも、チームとしての連携がいかに重要であるかを示しています。
チーム内のネガティブ要素を無効化する方法
先ほど、私の実体験の際には、攻撃的な先輩社員を取り除くというかなり大胆な戦略に出ましたが、実はそこまでやらなくてもチーム内の活性化を目指すことができます。
その方法がネガティブ要素の無効化です。
その鍵は、その場の空気を読んで明るくすることです。簡単に言えば「場を和ます」という行動が集団のパフォーマンスを30〜40%も下げることを防ぐことができます。
つまり、チーム内の空気をポジティブに保つことができる人物になることがチームにとって非常に大切な存在なのです。和やかな雰囲気を作るさりげない行動は、チーム内の緊張をほぐし、パフォーマンスダウンを防ぎます。
例えば、攻撃的な発言で「そんなこと必要あるんですかね?」というようなことを言われた時に、「そうですね、確かに大変な作業かもしれないんですけど、お客さんには必要になると僕は思うので、良いと思います。〇〇さん、良かったら僕も手伝いますよ!」
こういった発言が1つあるだけでチームというのは劇的に変わります。
チームの結束を高める要素
チーム力を阻害する要因を防ぐのと合わせて、チームの結束を高める要素についても
意識しておくと、さらに成果に繋がるチームビルディングを目指すことができます。
要素①:帰属意識
チームメンバーが互いに強い帰属意識を持つことで、一致団結します。
要素②:親密な交流
定期的な食事やカジュアルな会話は、親密さを高め、チームとしての結束を強化します。
要素③:個人の尊重
メンバー一人ひとりを大切にし、認める文化がチーム全体のモチベーションを高めます。
要素④:未来の約束
「これからもそのままでいてほしい」という言葉は、メンバーに安心感を与え、長期的な目標に向かって頑張る動機づけとなります。
最も有害な一言と最も励みになる一言
ここまででチームビルディングが環境づくり非常に大切ということをお伝えしてきましたが、以下の一言だけは絶対に覚えておいてください。
最悪な一言: 「お前の代わりなんていくらでもいるんだぞ。」
この言葉は、チーム内の信頼を破壊し、個人の尊厳を傷つけます。
最高の一言: 「これからもずっとあなたらしくいて大丈夫だよ。」
これは、メンバーに対する絶大な信頼と支持を示す言葉です。
ここまでの内容をさらっとまとめると、チームビルディングにおいて環境作りが全てです。
そのためより良いチームを作るには、個々のスキルや成果を超えた、安心できる環境作りが成功の鍵となります。チームメンバー同士がお互いを尊重し、支え合う文化があれば、どんな困難も乗り越えることができるため、個々のメンバーとの信頼関係を大切することを意識しましょう。
リーダーは弱みを見せなければならない
2つ目の成功事例は、「リーダーは弱みを見せなければならない」というテーマで紹介をします。
リーダーシップにおいて、強さや決断力だけが重要なわけではありません。真のリーダーは、自身の弱さをチームメンバーに見せることで、信頼と共感を築き、チーム全体の結束力を高めることができます。能力が高いリーダーほど、自分の弱みをさらけ出すことに躊躇しがちですが、そのような行動がチーム内のコミュニケーションを促進し、より健全な職場環境を作り出すのです。
ここでは鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの事例を元に紹介します。
彼は鉄鋼王として世に知られる人物ですが、実は鉄鋼に関してはあんまり詳しくなかったそうです。
彼が得意としていたのが、周囲とのコミュニケーションです。
その中で自分ができないことは、全て周りの人に頼むことでここまでの実績を作ったのです。
事実、彼の墓標には「おのれよりも優れた者に働いてもらう方法を知る男ここに眠る」という言葉を刻んでいるほど自分の弱さを見せて、周りに助けてもらったということがよく分かるでしょう。
これほど成果をあげるための優れた処方はないと言えます。
弱さを見せることの価値
弱さを見せることの価値としては大きく3つあります。
1. 信頼の構築
リーダーが自ら弱みを見せることは、信頼関係の構築に不可欠です。例えば、あるプロジェクトリーダーが、新しい技術の習得に苦労していることを率直にチームに伝えた場合、その姿勢は真摯さをもって受け止められ、チームメンバーからのサポートや理解を得やすくなります。このような行動は、リーダーへの信頼を深めることにつながります。
2. オープンなコミュニケーションの促進
リーダーが弱みを公にすることで、チームメンバーも自身の弱点や不安をオープンにしやすくなります。これにより、課題を共有し、解決策を一緒に考える文化が育まれます。例えば、営業チームのリーダーが、自身が特定の顧客との関係構築に苦手意識があることを明かしたとします。このような行動は、チームメンバーが自らの経験やアイデアを共有し、協力して問題を解決する動機付けになります。
3. チームの結束力強化
弱みを共有することは、チームメンバー間の結束力を高めることにも寄与します。互いの弱点を認識し、支え合うことで、チームとしての一体感が生まれます。たとえば、あるITプロジェクトのリーダーが締め切りに間に合わせることへの不安をチームに打ち明けた場合、メンバーはリーダーの不安を理解し、プロジェクトを成功させるために一層協力し合うようになるでしょう。
リーダーが自ら弱さを見せることは、決して弱点ではありません。それは、チーム内での信頼を築き、オープンなコミュニケーションを促進し、結束力を強化するための強力な手段です。リーダーによるこのような行動は、チーム全体をより強く、対応力のあるものに変えることができます。
聞きにいく力
3つ目の成功事例は、「聞きにいく力」というテーマで紹介をします。
リーダーシップにおいて、コミュニケーションは重要な要素ですが、その中でも特に注目すべきは「聞きにいく力」です。リーダーが積極的にチームメンバーの声を聞き、彼らの立場や意見を理解することは、組織の健全な発展に不可欠です。
これはスターバックスジャパン社長の事例になりますが、彼は社長という立場ですが、自らが全国の店舗へ足を運んで、スタッフ一人ひとりに「何か困ったことはないですか?」という問いかけを行うそうです。
チームにおけるリーダーがメンバーのニーズや悩みを理解し、サポートすることがリーダーがやるべき最大の仕事です。特に、自分の力で弱い人を助ける姿勢は、リーダーとしての人間性を示す重要な行動です。他者の困難を理解し、適切な支援を提供することで、チーム全体の信頼と結束力が高まります。
リーダーが聞きにいく力を欠けば、組織は危機に直面する可能性があります。人々の声を無視し、対話の機会を提供しないリーダーは、信頼を失い、組織の一体感を崩壊させる恐れがあります。その結果、不満や不信感が増し、組織全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。
このことからチームビルディングにおいて、聞きにいく力が不可欠なスキルであると言えます。リーダーが率先してコミュニケーションを促し、メンバーの声を尊重し、彼らの立場やニーズを理解することで、より強力で健全な組織を築くことができるのです。
まとめ
今回は「チームビルディングで成果の出る組織へ」というテーマでマネージャーが知っておくべきポイントを解説してきました。
- チームビルディングは環境が全て:安心な環境づくりこそ成功の鍵
- リーダーは弱みを見せなければならない
- 聞きにいく力
リーダーがこれらのポイントを理解し、実践することで、チーム全体の結束力を高め、成果の出る組織を築くことができるためぜひ事例を参考に実践してみてください。