小規模事業者持続化補助金は、持続化補助金ともよばれ、小規模事業者の販路開拓や生産性向上の取り組みを支援する補助金です。持続化補助金は、小規模事業者にとって使い勝手のよい補助金です。
本記事では、中小企業診断士が小規模事業者持続化補助金について分かりやすく解説します。補助金の概要から申請方法まで、詳細を網羅しているので、ぜひ最後までご一読ください。
小規模事業者持続化補助金とは?
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が自社の経営を見直し、持続的な経営を行うための販路開拓や生産性向上の取り組みを支援する目的でつくられた補助金です。
一般枠では補助上限額が50万円で、特別枠などを活用すると最大で250万円の補助を受けることができます。
補助金・助成金・給付金の違い
補助金とよく似た言葉として助成金・給付金などがあります。同一視されることが多いこれらの言葉ですが、大きな違いがあります。各補助金・助成金・給付金に、それぞれの要件がありますが、一般的な違いは以下の通りです。
まず、補助金・助成金は実際に支払った経費の一部が補助・助成され、補助・助成の対象となる経費も決まっています。対して給付金は、給付金の使用用途は定められていません。
また、助成金・給付金は申請の要件を満たせば、原則、助成・給付されますが、補助金は審査があり、申請した全ての事業者が採択されるわけではありません。
つまり、補助金とは対象となる経費が決まっており、その一部が補助されるものであり、審査があり申請した全ての事業者が採択されるわけではありません。
補助金 | ・支払った経費の一部が補助され対象となる経費が決まっている。 ・審査があり申請した全ての事業者が採択されるわけではない。 |
---|---|
助成金 | ・支払った経費の一部が補助され対象となる経費が決まっている。 ・要件を満たせば助成される。 |
給付金 | ・使用用途は定められていない。 ・要件を満たせば給付される。 |
どのような事業者が対象となるのか?
“小規模事業者”持続化補助金とあるように、対象となる事業者は小規模事業に該当する法人、個人事業、特定非営利法人です。
小規模事業者の定義は常時使用する従業員数で定められており、以下のようになります。
対象者 | |
---|---|
商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く) | 常時使用する従業員数5人以下 |
宿泊・娯楽業 | 常時使用する従業員数20人以下 |
製造業その他 | 常時使用する従業員数20人以下 |
目的と期待される効果
小規模事業者持続化補助金の目的は、販路開拓や生産性向上による小規模事業者の持続的な経営を支援することにあります。
また、持続化補助金は、小規模事業者が自ら経営計画を作成した取り組みを支援する補助金でもあり、事業者自身が自社の経営を見直すことで持続的な経営につなげることも期待されています。
小規模事業者持続化補助金の概要
小規模事業者持続化補助金の申請枠や対象となる経費など、基本的概要についてここからは見ていきます。
小規模事業者持続化補助金の申請枠
小規模事業者持続化補助金は補助上限50万円・補助率2/3の通常枠を基本に補助上限が上がる特別枠が設けられています。特別枠は特別な要件を満たすことで申請が可能となります。
補助金額 | |||||
---|---|---|---|---|---|
類型 | 通常枠 | 賃上げ枠 | 卒業枠 | 後継者支援枠 | 創業枠 |
補助率 | 2/3 | 2/3(赤字事業者は3/4) | 2/3 | ||
補助上限 | 50万円 | 200万円 | |||
インボイス特例 | 上記補助上限に50万円上乗せ |
小規模事業者持続化補助金について、通常枠は長年、大きな変化はありませんが、補助上限が上がる特別枠は公募回によって内容が変わる場合があるので、申請の際には最新の情報をチェックしてください。
また、お住いの地域により、商工会議所地区、全国商工会連合会の2つの窓口があるため注意が必要です。
ご自身がどちらに該当するかわからない場合には、お近くの商工会議所または商工会にお問い合わせください。
小規模事業者持続化補助金の対象経費
先に述べたように持続化補助金では、補助対象となる経費が要綱で定められています。以下に小規模事業者持続化補助金ガイドブックから対象経費を引用します。
補助対象経費科目 | 活用事例 |
---|---|
①機械等装置費 | 補助事業の遂行に必要な製造装置の購入等 |
②広報費 | 新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置等 |
③ウェブサイト関連費 | ウェブサイトやECサイト等の開発、構築、更新、改修、運用に係る経費 |
④展示会等出展費 | 展示会・商談会の出展料等 |
⑤旅費 | 販路開拓(展示会等の会場との往復を含む)等を行うための旅費 |
⑥新商品開発費 | 新商品の試作品開発等に伴う経費 |
⑦資料購入費 | 補助事業に関連する資料・図書の購入費用等 |
⑧借料 | 機器・設備等のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの) |
⑨設備処分費 | 新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備処分等 |
⑩委託・外注費 | 店舗改装など自社では実施困難な業務を第三者に依頼(契約必須) |
補助対象経費の注意事項として、車やパソコンなどの汎用性が高く補助事業以外の使用方法が簡単に想像できるものは、事業に必要なものであっても原則、対象外となるため注意が必要です。
また、対象経費として要件を満たしていても、補助金の趣旨と合致しない場合は申請をしても採択されない確率が高いため注意が必要です。
これ以外にも対象経費については各種注意事項があるため、より詳しい内容は要綱をご確認ください。
申請から審査の流れと注意点
申請から審査の流れは以下のとおりです。
- 計画書の作成と各種申請書類の準備
- 商工会議所・商工会から支援計画書を発行してもらう
- 申請内容の審査
- 採択・交付決定
- 補助事業の実施
- 実績報告書の提出
- 補助金の請求
計画書の作成と各種申請書類の準備
持続化補助金を申請するためには補助事業の経営計画書を作成する必要があります。
計画書のボリュームとしては、1万文字程度が目安となります。この計画書が採点審査され、採択・不採択が決まるためポイントを押さえた計画書の作り込みが重要です。
また、計画書の他に提出資料があるため、事前に準備をしておくとよいでしょう。主な提出資料は以下の通りです。
- 事業支援計画書(商工会議所・商工会が発行※以下、記載)
- 直近1期の貸借対照表・損益計算書(法人)
- 直近の確定申告書(個人事業主)
商工会議所・商工会から支援計画書を発行してもらう
提出資料の事業支援計画書は商工会議所・商工会に計画書を提出し確認を受け、作成してもらう必要があります。
小規模事業者持続化補助金は、商工会議所・商工会の支援を受けながら事業者自らが経営計画を作成することを前提としており、事業支援計画書がなければ申請をすることができません。
また、事業支援計画書は、補助金申請の締切の1週間前後が受付締切の場合があるため注意が必要です。
申請内容の審査
申請した計画書の内容は、外部有識者等により審査が行われます。
審査は、私のような中小企業診断士が行う場合も多く、審査のポイントを踏まえ計画書の審査が行われます。
採択・交付決定
申請内容の審査により、採択・不採択が決定します。審査結果は持続化補助金のホームページ上で一覧として公表され、申請者にも採択・交付決定の連絡が届きます。
ここで注意したいのが、採択と交付決定は別であることです。採択の後に交付決定の連絡があり、補助事業は交付決定の後から実施することが可能となります。
採択をされても、交付決定前に補助事業を実施してしまうと、補助対象外になってしまうため、補助事業の実施タイミングには最新の注意が必要です。
補助事業の実施
交付決定が届いた後から、補助金申請時の経営計画書で作成した計画を実施することが可能となります。原則として、計画書に記載していない取り組みは補助事業として認められません。
計画に変更がある場合などは、補助金事務局に確認し、許可を取る必要があります。
実績報告書の提出
補助事業の経営計画書の事業が完了したら、実績報告書を提出します。
実績報告書では、補助事業で実施した内容を報告書として作成します。また、補助事業の対象経費で支払った経費の証拠書類等を整理し、実績報告書とあわせて提出します。
そのため、補助事業を実施する際は、見積もりから支払いまでの各種書類を整理し、保管しておく必要があります。証拠書類の揃え方にもルールがあり、証拠書類が不足していると、経費が認められないこともあります。
そのため、補助事業の実施前に、必要な証拠書類を確認し整理しておくことが大切です。
補助金の請求
実績報告書の提出後に事務局で審査・確認が行われ補助金額が確定します。報告書に不備があった場合などには、事務局の指示に従い修正や追加資料の提出が必要となり、不備が解消しない場合等には補助金額の減少等もあるため注意が必要です。
実績報告書の事務局で認められ、金額が確定した時点で補助金を請求し、補助金が入金されます。
持続化補助金を含め、多くの補助金は一旦、自己資金で全ての事業を完了させ、報告書を提出した後に補助金額が確定し入金されます。
事前に補助金が支払われるわけではなく、報告書の審査期間も含め、補助金の入金までにタイムラグがあるため、その間の資金繰りも申請前から意識しておくことも大切です。
持続化補助金の審査のポイント
小規模事業者持続化補助金の審査のポイントもガイドブックや要綱で明記されています。
ガイドブックより引用します。以下のポイントを基準に採点審査がなされます。そのため、審査のポイントに沿った経営計画を作成することが重要です。
審査のポイント
○自社の経営状況を適切に把握し、自社の製品・サービスや自社の強みも適切に把握しているか。○経営方針・目標と今後のプランは、自社の強みを踏まえているか。
○経営方針・目標と今後のプランは、対象とする市場(商圏)の特性を踏まえているか。
○補助事業計画は具体的で、当該小規模事業者にとって実現可能性が高いものとなっているか。
○補助事業計画は、経営計画の今後の方針・目標を達成するために必要かつ有効なものか。
○補助事業計画に小規模事業者ならではの創意工夫の特徴があるか。
○補助事業計画には、ITを有効に活用する取り組みが見られるか。
○補助事業計画に合致した事業実施に必要なものとなっているか。
○事業費の計上・積算が正確・明確で、真に必要な金額が計上されているか。
小規模事業者持続化補助金<一般型>ガイドブック
小規模事業者持続化補助金の申請方法
小規模事業者持続補助金は、郵送と電子での申請が認められていましたが、記事執筆時点の第16回公募(2024年5月27日締切)では電子申請のみとなっています。
第16回申請は公募開始から締め切りまでの期間も、過去公募回と比較し極端に短く、特殊な申請回であるため、第17回以降は、郵送での申請も再開される可能性もあります。
しかしながら、昨今の申請では郵送申請が減点対象と要綱等にも明記されており、郵送が可能な場合でも電子申請がおすすめです。
電子申請の際には、「gBizIDプライム」というアカウントが必要なため事前に取得しておきましょう。「gBizIDプライム」は以下のURLより取得してください。
申請スケジュール
小規模事業者持続化補助金の申請スケジュールは、申請回によって異なります。
最新の情報については、以下の公式サイトをご確認ください。
申請を成功させるためのポイント
中小企業診断士の目線から実際に申請を成功させるポイントについて解説していきます。
持続化補助金の趣旨と審査のポイントを理解し事業計画書を作成する
先にも述べたように持続化補助金は申請した計画書が審査され、採択・不採択が決まります。
持続化補助金の趣旨である販路開拓・生産性向上の趣旨を押さえたうえで審査のポイントに沿った計画書を作成しましょう。
必要な書類を漏れなく準備する
公募要領等でも「書類に不備があった場合には不採択となります」と明記されています。書類不備で不採択とならないよう申請書類の確認は念入りに行いましょう。
申請期限内に必ず申請する
申請期限内の提出は必須です。特に電子申請の場合には、申請期限で定められた時間を過ぎると申請ができなくなってしまうので、余裕をもって申請するよう心がけましょう。
不明な点があれば商工会議所・商工会や事務局に早めに相談する
持続化補助金は必要書類で商工会議所・商工会が出す書類が必須書類として定められています。また、この書類は申請締切前より早く締め切りが設けられています。
不明点がある場合も含め、申請を検討した際は早めに商工会議所・商工会への相談をお勧めします。
また、申請したい経費が対象になるか不安な場合は事前に事務局に問い合わせて確認をしておきましょう。
よくある質問
Q:どのような事業が補助金の対象となりますか?
A:持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓や生産性向上の取り組みに活用ができます。補助対象経費は、幅広い経費が対象となりますが、販路開拓等の取組に活用する計画であることが必要です。
Q:審査にはどれくらい時間がかかりますか?
A:審査期間は明確に公表されていませんが、申請締め切りから約2ヶ月で採択結果が公表されるケースが多いです。
Q:採択率はどのくらいですか?
A:採択率は、公募回により幅がありますが、40%〜60%程度で推移しています。
まとめ
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が、事業の持続可能性を高め、将来の成長につなげるための貴重な支援制度です。
補助金申請のための経営計画書作成は、自身の事業を見直すよい機会にもなるため、本記事の内容も参考に積極的にチャレンジしてみることもおすすめします。