企業を運営する上で、ランニングコストは切っても切れない存在であり、ランニングコストを上手く削減することで、企業の健全な運営を保てます。
逆を言えば、不要なランニングコストを抱えてしまっている状態の企業は、健全な運営をすることが難しく、ビジネスで上手く利益を出せたとしても、組織運営が原因で手元に残る利益を減らすことになってしまうでしょう。
そこでこの記事では、ランニングコストの概要やコスト削減のコツについて紹介します。
「ランニングコストのシミュレーションが難しい」と感じている中小企業の経営者や財務担当者にとって、有益な情報をまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。
ランニングコストって何?
「ランニングコスト」とは、事業や運営を続けるために定期的に必要な経費のことを指します。
ランニングコストには、給与、賃貸料、光熱費、通信費などが含まれ、ビジネスを展開している業界によって内容が異なることも少なくありません。
ランニングコストを適切に管理することで、効率的な運営が可能となり、利益の最大化に繋がるでしょう。
特に、中小企業やスタートアップ企業にとっては、ランニングコストの削減が事業の成長と持続に関わる重要な要素となります。
ランニングコストとイニシャルコストって何が違うの?
「イニシャルコスト」とは、新しい事業やプロジェクトを開始する際に初期段階で発生する一時的な費用のことです。
イニシャルコストには、設備購入費、施設建設費、ライセンス料、設立手続き費用、初期マーケティング費用などが含まれます。
ランニングコストと異なり、イニシャルコストは、一度発生すればその後は定期的に発生することがありません。
なお、イニシャルコストの適切な計画と管理は、事業開始後の運営を円滑に進めるための鍵となります。
中小企業で発生するランニングコストを一挙大紹介
ここでは、中小企業で発生するランニングコストの内容を項目ごとに解説します。
ランニングコストと一言で言っても、構成する要素は多岐に渡り、コスト削減をするためには、1つ1つの要素を確認することが重要です。
紹介するのは一例ですが、以下の項目を参考に、自社のランニングコストの全容を把握してみてください。
賃貸料
「賃貸料」とは、中小企業が事業を運営するために使用するオフィスや店舗、倉庫などの物件に対して定期的に支払う費用のことを指します。
賃貸料は固定費として計上され、経営に大きな影響を与えるため、適切な物件選びとコスト管理が重要です。
中小企業にとっては、賃貸料が経営に与える影響が大きい傾向が強いので、賃貸料の負担を軽減するための助成金や補助金の活用も検討する価値があります。
水道光熱費
「水道光熱費」とは、中小企業が日常の事業の活動する上で必要な水道、電気、ガスなどの費用のことを指します。
変動費として計上され、季節や使用量によって異なることがほとんどです。
効率的なエネルギー管理は、企業の収益改善に繋がるため、数の供給業者を比較し、最適な料金プランを選ぶことをおすすめします。
通信費
「通信費」とは、中小企業が事業を運営するために必要なインターネット、電話、携帯電話、ファックスなどの通信サービスにかかる費用のことを指します。
顧客との連絡、オンライン業務、リモートワークなどに不可欠な経費であり、固定費として計上されます。
通信費の管理は、コスト削減と業務効率の向上に直結するうえ、企業の事業拡大にも大きく影響する要素です。
最新の通信技術を導入する際には費用対効果を把握し、競争力を維持しつつ経費を削減できるか否かがポイントとなるでしょう。
人件費
「人件費」とは、中小企業が従業員に支払う給与、賞与、福利厚生費用、社会保険料などの総額を指します。
事業運営の中で最も大きな固定費の1つであり、経営に大きな影響を与えることがほとんどです。
従業員のモチベーションを維持し、離職率を低く保つためには適切な報酬制度や福利厚生の充実も重要なため、不要なランニングコストを見極めるのが難しい傾向があります。
広告宣伝費
「広告宣伝費」とは、中小企業が自社の製品やサービスを市場に広めるために費やす費用のことを指します。
オンライン広告、印刷物、テレビやラジオのコマーシャル、イベントや展示会の参加費用、SNSマーケティングなどが含まれ、企業のマーケティング戦略・戦術によって内容は大きく異なります。
なお、中小企業は限られた予算で最大の効果を得るために、デジタルマーケティングや地域密着型の広告戦略を活用することが多いです。
消耗品費
「消耗品費」とは、中小企業が日常業務を遂行するために必要な文房具、コピー用紙、インクカートリッジ、清掃用品など、使い切りタイプの物品にかかる費用を指します。
消耗品費は変動費として扱われ、使用量や業務内容によって異なるため、定期的な予算見直しが重要です。
コスト削減のために、まとめ買いやリサイクル品の活用、必要に応じた在庫管理をすることで、効率的な経費管理が可能です。
行政書士・税理士の顧問費用
行政書士・税理士の顧問費用は、中小企業が法務や税務の専門知識を必要とする際に支払う定期的な費用です。
顧問契約を結ぶことで、複雑な法務・税務手続きを円滑に進められ、コンプライアンスの確保や経営リスクの軽減が図れるため、行政書士・税理士に顧問を依頼する企業も多いです。
専門家の助言を受けることで経営の安定化と効率化を実現できるため、長期的な成長を支援する重要な経費となります。
法人住民税
「法人住民税」は、中小企業が地方自治体に対して支払う税金で、法人税割と均等割の2つの部分から構成されます。
法人税割は企業の所得に応じて計算され、一方、均等割は事業規模や従業員数に基づき一定額が課されます。
法人住民税は地方自治体の財政を支える重要な収入源です。
中小企業は適切な納税管理と計画を行うことで、税負担を最小限に抑えつつ、地域経済の発展に貢献することが求められます。
ランニングコストの算出には他社の実績を利用する
事前にランニングコストを算出したい場合は、同業他社の実績を分析することをおすすめします。
同業他社が売り上げに対してどの程度のランニングコストを発生しているかを分析することで、自社の事業スケールに合わせたランニングコストをシミュレーションすることも可能です。
同業他社のデータを確認したい場合は、各会社の公式ホームページの決算報告書を参考にするか、中小機構が運営する中小企業・創業予定者のためのポータルサイト(J-Net 21)が公開している「業種別開業ガイド」を参考にすると良いでしょう。
コスト削減するための方法3選
ここでは、ランニングコストを削減する上で、おすすめの方法を3つ紹介します。
ランニングコストは企業努力次第で大きく削減でき、経営状態を改善する手段として効果的です。
「売り上げを伸ばしているけど、なかなか経営状態が良くならない」などの悩みがある場合は、ランニングコストの削減に目を向けてみると良いかもしれません。
以下の方法は、簡単に実践できるものをピックアップして選びましたので、試してみてはいかがでしょうか。
水道光熱費を削減する
電気や水道を節約することで、水道光熱費を削減できます。
電気や水道を節約するためには、以下の方法を実践してみると良いでしょう。
- 蛇口をこまめに締める
- エアコンの温度を健康に問題が出ない程度に調節する
- LDEライトや最新の家電設備に変える
なお、節約する施策を打ち出した際には、組織全体で実行できるように、伝達方法やルール決めが重要になります。
また、既存の電力会社を見直し、他の電力会社を使用することを検討することも有効です。
会計ソフトなど外部ツールを活用する
会計ソフトや外部ツールを使い、常にランニングコストを正確に把握することも、コスト削減の案として有効でしょう。
経費精算システムや会計ソフトを利用し、ランニングコストを把握することで、ランニングコストのシミュレーションを随時更新できるため、不測の事態が発生した際にも、即座に対応できるでしょう。
業務をアウトソーシングする
業務をアウトソーシングすることで、組織のメンバーの労力を効率よく稼働させられるので、人件費の削減が期待できます。
特に中小企業では、1人1人の業務範囲が広くなってしまい、過剰な作業量から無駄な残業や休日出勤をしてしまっていることも少なくありません。
業務をアウトソーシングすることで、自社で全ての業務を行うよりも、人件費や設備費を抑えられます。
さらに、専門的なスキルや知識を持つ外部の専門家に業務を委託することで、品質の向上が期待できるでしょう。
コスト削減に成功した事例を大紹介
ここでは、コスト削減に成功した企業事例を2つ紹介します。
他企業のコスト削減を把握することで、自社にコスト削減の成功事例を導入できます。
他社のコスト削減策を導入する際には、自社の事業内容に合っているか、働く環境に悪影響が出ないかなど、自社の規模やリソースを把握して導入を判断すると良いでしょう。
株式会社コンテンツラボ
株式会社コンテンツラボは、海外在住の日本人起業家を対象にコンサルティングやサポートサービスを提供している企業です。
同社は、オンライン秘書・オンラインアシスタントサービス『i-STAFF』に雑務をアウトソーシングし、コスト削減を可能にしました。
雑務をアウトソーシングしたことで、雑務に使用していた月30時間以上のリソースを使用し、事業拡大したことで新規顧客の獲得に成功しています。
株式会社富士薬品
株式会社富士薬品は、配置薬販売、ドラッグストア・調剤薬局、医療用医薬品販売、医薬品研究開発、医薬品製造を展開している複合型医薬品企業です。
同社は、Teachme Bizを利用して紙のマニュアルを全てペーパーレス化し、画像を主体とすることで消耗品コストを削減しています。
紙のマニュアルを使用していたときに比べ、2,000万円のコストを削減に成功しただけでなく、画像を主体とすることでマニュアルを見る側、作る側双方の負担を軽減する効果も出ています。
ランニングコスト削減の注意点
ここでは、ランニングコスト削減をする上での注意点を2つ紹介します。
ランニングコストの削減は経営状態を改善する効果がありますが、方法を誤ってしまうと事業に悪影響を及ぼしてしまう可能性が高いです。
ランニングコストの削減案を導入する際には、以下のポイントを意識して、組織に反映させると良いでしょう。
必要なコストと不要なコストを見極める
ランニングコストの削減を目的にしてしまうと、必要以上に経費を削減してしまい、事業に悪影響を及ぼしてしまうことも考えられます。
コスト削減はあくまでも利益向上の手段であるため、目的にしてしまわないように注意しましょう。
特に、従業員の負担を考慮しないコスト削減案を導入してしまうと、離職率が上昇してしまうなど、組織の運営自体に悪影響が出てしまうので、一部の従業員や部署だけに負担をかけるのではなく、企業全体が取り組む姿勢を重視しましょう。
品質の低下に注意する
コスト削減をするうえで、設備や備品のランクダウンをしてしまい、サービスの品質が低下してしまう事態は避けるように徹底しましょう。
サービスの品質が低下してしまうと顧客が離れてしまい、売り上げが低下してしまう事態に陥ってしまいます。
コスト削減をする際には、品質の影響に細心の注意を払って検討するようにしましょう。
ランニングコストの理解を深めて、不要なコストを見つけてみよう
この記事では、中小企業のランニングコストに焦点を当てて、様々な情報を紹介しました。
ランニングコストは企業の大きさ問わず発生するものであり、ランニングコストに無関心でいると企業の経営状態が悪化してしまうことも考えられます。
ランニングコストを軽減するためには、ランニングコストを項目ごとに正確に理解し、品質や事業に影響の出ない対策を講じることが重要です。
この記事をきっかけに、自社のランニングコストを正確に把握して、コスト削減を試みてみてはいかがでしょうか。