みなさんは「パーキンソンの法則」というものをご存知でしょうか?
例えば、数時間で完了できるとわかっているタスクや課題を締め切り直前まで後回しにしたことはありませんか?実はこれはパーキンソンの法則の作用でもあります。
人によっては癖になってしまい、悩みの1つとして抱えている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、パーキンソンの法則についてよく理解し、対策を講じれば、後回しにせずに業務を効率よく進めることができます。
こちらの記事ではそんなパーキンソンの法則についてわかりやすく解説いたしますので、最後までご覧ください。
パーキンソンの法則とはなにか?
パーキンソンの法則とは、「人は利用可能な資源をあるだけ使ってしまう」という人間の性質を表現した法則のことです。
つまり、仕事の複雑さや内容は関係なく、人は割り当てられた時間や資源をすべて使い果たす傾向があるため、想定以上に時間や資源を使いがちということになります。
この法則は、イギリスの歴史学者および政治学者のシリル・ノースコート・パーキンソン氏が1955 年に『エコノミスト』に掲載された風刺エッセイにて「パーキンソンの法則:進歩の追求」を通して最初に提唱しました。
この法則は、時間や予算などと大きく関わるため、ビジネスにおける個人や組織の効率性を上げる上で、理解しておくべき重要な法則です。ただ、パーキンソンの法則は「第1原則」と「第2原則」の2つから成り立っています。
その2つの法則については以下で紹介いたします。
第1原則
パーキンソンの法則の第1原則は「仕事の量は完成期限までに与えられた時間をすべて満たすように膨張する」という法則で、仕事の量と時間の関係を示しています。
例えば、本来は2時間程度で終わる仕事であっても、4時間の猶予を与えられると、多くの人は完了までに4時間すべて使ってしまうというものです。与えられた時間に余裕を持たせても、効率性は必ずしも向上しません。
このように、第1原則は時間に余裕があればあるほど、仕事を後回しにしたり、必要以上の時間を費やしたりなど、夏休みの宿題のように時間を期限まで消費する状態を表します。
第2原則
パーキンソンの法則の第2原則は「支出額は収入額に達するまで膨張する」法則で、支出と収入の関係を示しています。
例えば、プロジェクトの予算において、ゆとりを持たせるべく、本来の予算よりも多く設定したものの、最終的には上限まで使い切ってしまうというものです。
組織や個人が収入を増やすと、支出も同じ様に増加し、節約や貯蓄が難しくなる傾向を示しています。企業の場合、増収しているにも関わらず、利益が伴っていない状況は第2原則にあたります。
このように、第2原則は増えた分のお金は最終的に上限まで使ってしまう状態を表しています。
パーキンソンの法則の実例
パーキンソンの法則は、ビジネスシーンにおいて身近な存在です。そんなパーキンソンの法則の第1法則と第2法則の具体例を以下でご紹介いたします。
第1原則の場合
第1原則は、与えられた時間いっぱいまで仕事を後回しにしたり、費やしてしまい、効率が下がってしまうというものでした。こちらでは3つの例を紹介いたします。
締め切りギリギリまで先送り&作業
仕事をこなす際、提出日までに余裕があるとどうしても「後でやればいいや」という考えが浮かび、結果締め切りギリギリまで先送りにしてしまう場合があります。
また、早期に仕上げたとしても、時間的に余裕があると「より良いものにしよう」と考え、締め切りまで追加や修正を重ね、結局締め切りまで時間一杯消費してしまいます。
長時間の会議
例えば、会議の開始・終了事前に設定した場合、議題の数が少なかったとしても、終了時間間際まで会議が続くことがあります。
第1原則の考えから、人は「終了する時間まで会議をする」ということにフォーカスしてしまい、与えられた時間のすべてを費やしてしまうのです。
ある企業では、定例会議を2時間かけて行っていました。そこで会議の開始時間を退勤時間の1時間半前に設定してみたところ、会議を1時間半で終わらせることに成功したそうです。
第2原則の場合
第2原則は、どれだけ収入が増えたとしても、上限まで支出が増えてしまうというものでした。こちらでは2つの例を紹介いたします。
売上とともに支出も増加
第2原則により、たとえ会社全体の売上が上がろうと、支出も同時に増加し、全体の利益がほとんど変わらなくなってしまう場合があります。
より高い売上を得るために、広告費や接待費が増加する、あるいは生産性を高めるための社内環境の改善に着手して支出が増えるケースがあるからです。
この場合、結果的に利益は増大せず、減少してしまうことがあります。
渡し方による経費の変化
例えば、出張へ行く社員がいたとします。その社員へ経費を渡す際、出張前に与えると、その社員は渡された金額を基準にして経費を使い切り、ほとんど余らないことがあります。
企業によっては経費を前渡しから後日清算する方式へ変更し、経費の削減を図っているそうです。
パーキンソンの法則への対策
パーキンソンの法則は企業が克服すべき多くの課題と関連しています。ここではパーキンソンの法則を克服するための対策についてご紹介いたします。
第1原則の場合
第1原則を克服するためには、企業側・社員側の双方のタイムマネジメントに関する対策を取り入れる必要があります。
以下に対策をご紹介しますので、参考にしてみてください。
具体的で戦略的な作業計画を立てる
まず、目標に対して詳細で実現可能な範囲の作業計画を立てることが克服する第一歩です。
作業計画では、目標をできるだけ数値化し、期限やすべての作業で要する時間、リソースなどを洗い出しましょう。
そしてそれをもとに計画を立て、作業を進めると、作業が後回しになるのを防げます。
自ら業務の締め切りを設定する
業務の締め切りを社員自ら設定するという方法はパーキンソンの法則において有効です。漠然とした提出日を設定するのではなく、実際の作業量を踏まえて締め切りを設定しましょう。
まずは作業に必要なリソースを計算し、各作業の内容を明確化します。
次にリソースを投入したうえで作業に必要な時間を算出し、自分の締め切りを設定します。これによって全体の進捗管理も容易となり、作業の効率化が可能となるのです。
タイムボクシングの活用
作業時間を区切るために、各タスクに優先度や制限時間を作り、タスクをそれぞれブロックのように区切るマネジメント手法:タイムボクシングも活用しましょう。
例えば「午前10時から12時まではレポート作成の時間」「午前13時から15時まではプレゼン資料作成の時間」のようにします。これによって有効に時間を使えるようになり、仕事を後回しにすることも減るでしょう。
ポモドーロテクニックの活用
第1原則を克服するうえで、集中力を持続させることも大切です。そのため、「作業へ25分間集中したら、5分間休憩する」というセットを繰り返す手法:ポモドーロテクニックを用いるのも効果的です。
ポモドーロテクニックを活用すると、ひとつの作業を30分で完了できるようになり、期限まで先延ばしにし、締め切り直前にバタバタしてしまう状況を避けられます。
人事評価の仕組みの改善
人事評価の仕組みを改善するというのも、時間効率に対する意識を高められるため有効な手法です。
例えば、残業が増えるとそれだけ給与が増えることから、社員は「定時までに仕事が終わらなくても大丈夫」という心理が働くことも少なくありません。
このような場合は、時間効率を評価する仕組みを取り入れましょう。
一例として挙げると、残業時間を削減するための目標を各部署設定し、それを達成した部署は賞与を与えるという評価制度があります。
正確な勤怠管理の実施
他にも残業を抑制するには、正確な勤怠管理も効果的です。
勤怠管理システムを活用して残業時間の合計を可視化し、残業の上限に近づいた場合、アラーム機能で通知するなどの方法が挙げられるでしょう。
社員は自分たちがどれだけ残業しているかが一目でわかるようになり、時間に対する意識が高まります。前述の評価制度と組み合わせることで、残業の抑制効果をより高められます。
第2原則の場合
第2原則を克服するためには、予算と支出それぞれの現状を把握し、得られた結果の費用対効果を分析する必要があります。
以下に対策をご紹介しますので、参考にしてみてください。
予実管理の徹底
第2原則を予防するためには、まず予実管理を行い、実際の支出状況を知ることが重要です。
最初にすべての費用項目を洗い出し、来期の計画を早期に立て、1年間の予算を設定します。
費用の洗い出しのフェーズで、固定の費用だけでなく、唐突な費用や売上とともに増加する費用なども想定し、あらかじめ一定の金額を設定しておくことがポイントです。
次に予算に対する支出の実績を明らかにしましょう。実績は金額だけでなく使い道まで把握し、予算と実績にギャップが見られる場合は原因を分析します。
投資効果を測定する習慣を作る
設備などへ投資したら、定期的に効果を測定するサイクルを身に付けましょう。たとえ投資額が予算内に収まっていようが、効果が十分に得られなければ無駄となります。
定量的な基準を用いて効果を測定し、この投資が適切か否かを判断する必要があります。
費用対効果の確認
設備投資に限らず、「企業活動で発生する費用がどのくらい利益を生んでいるのか」といった評価も大切です。
とくに人件費はあらゆる部署で発生するため、費用対効果の把握、分析などのサイクルは大切です。
対策においてのツール・リソース
ここまでご紹介したように、パーキンソンの法則は誰もが陥りやすい法則です。
特に第1原則はビジネスシーンで多く発生していることが考えられます。対策として、適正なタスク管理や時間管理を行うことが対策のひとつとも言えます。
「クラウドログ」はチームでタスクの可視化や優先度付け、予実管理、時間管理ができるため、パーキンソンの法則の改善と作業効率向上に最適なツールです。ぜひ活用してみてください。
まとめ
パーキンソンの法則の理解とその克服策を採用することは、会社を大きくするうえで必要不可欠です。
また、ビジネスシーンでもパーキンソンの法則を意識することで、社員も自分の時間やお金を効果的に使おうと意識します。
そのため不要な残業や休日出勤を減らしてワークライフバランスを整えたり、自身へ投資してキャリアアップしたりする社員が増える可能性があります。