マーケティング手法は、日々、新しい方法が提案されており、現在、どれだけのマーケティング手法があるのか、正確に把握することは難しいです。
大きく分けると、「マス・マーケティング」「ダイレクトマーケティング」「インバウンドマーケティング」「ゲリラマーケティング」に分類できます。その中で様々なマーケティング手法が生み出されています。
この記事では、そもそもマーケティングとは何か? 商品やサービスの提供者は、次々に新しいマーケティング手法が生まれる中でどう対応したら良いのかについて紹介します。
マーケティングの定義と目的
マーケティングと言うと、営業戦略、宣伝戦略、販促活動に目が行きがちですが、顧客ニーズを満たすために行われる企業活動全般を意味します。
営業戦略、宣伝戦略、販促活動といった狭い範囲だけでなく、前段階の市場調査や商品開発。販売後のサポートも含めた概念です。
究極のマーケティングは、「販売が不要になる状態」で、顧客ニーズにマッチした商品やサービスを提供することにより、売り込むことなく売れる状態に持っていくことです。
現代経営学の権威であるピーター・ドラッカー氏も「マーケティングの理想は、販売を不要にすること」だと述べています。(マネジメント【エッセンシャル版】)
また、日本マーケティング協会でも、マーケティングについて次のように定義しています。
マーケティングとは「顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。」
公益社団法人日本マーケティング協会について
マーケティング戦略の立て方
マーケティング手法については、現在、多数の方法が構築されており、正確な数は把握することができません。
マーケティング手法を選択する際に重要になることは、自社のビジネスにマッチした方法を選択することです。そのためには、自社のビジネスを根本から見つめなおすことが重要です。マーケティング戦略の立て方について簡単に紹介します。
①市場調査
どのようなビジネスでもまずは市場調査から始まります。
消費者のニーズやボリューム、競合する他社の状況についてのデータを集めたうえで分析を行います。
市場調査の方法としては、「テストマーケティング」のほか、アンケート、ホームユーステスト、インタビュー、行動観察(エスノグラフィ)などがあります。
また、分析の際に利用される手法としては、「SWOT分析」「3C分析」「PEST分析」などが知られています。
こうしたフレームワークを活用することでより効果的な分析が可能になります。
②ターゲットの設定
自社が提供する商品・サービスを誰に対して提供するのかを決めます。
ターゲットはできる限り具体的な人物像を描くことが重要とされており、「STP分析」などのフレームワークの活用が効果的です。
③自社が提供できる価値と提供方法の決定
どのような市場でも他社との競合は避けられません。
その中で、自社がターゲットに対してどのような価値を提供できるのかを明確にすることで、他社との差別化を図ることが、価格競争を避ける意味でも、非常に重要になります。
自社が提供できる価値が決まったら、ターゲットへのアプローチ方法を検討します。
具体的には、マーケティングミックスと言い、複数の観点から、自社と消費者との関連性を構築して自社の商品を選んでもらいやすい環境の整備を目指します。
「4P分析」や「4C分析」と呼ばれる分析手法が用いられます。
④広告宣伝活動(PR・販促)の実行
商品やサービスを売り出すための広告宣伝活動を行う段階です。私たちが日常的に使うマーケティング手法はこの段階で使われる手法を指します。
基本的な手法は、「マス・マーケティング」「ダイレクトマーケティング」「インバウンドマーケティング」の3種類が挙げられます。
また最近では、「ゲリラマーケティング」と呼ばれる新たな手法も注目されています。
⑤効果検証とPDCAサイクルを回す
広告宣伝活動により、思い描いた戦略通りに消費者に商品やサービスが届いているかどうかの検証を行います。改善策があれば、次回以降の施策に反映させます。
このようにして、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)のPDCAサイクルを回すことにより、マーケティング活動に磨きをかけていきます。
つまり、マーケティング活動は、商品やサービスの販売が軌道に乗ったら無用になるわけではなく、常に見直して改善を行うべきもので、終わりがない活動であることを認識しなければなりません。
マーケティング手法
特徴 | 手法 | |
---|---|---|
マスマーケティング | マスメディアに広告を出し不特定多数の消費者に訴求するマーケティング手法。 | テレビ広告、ラジオ広告、新聞広告、雑誌広告、屋外広告 |
ダイレクトマーケティング | ターゲットに直接コンタクトを取って販促を行うマーケティング手法。 | リアルマーケティング、テレアポ、ダイレクトメール、メール |
インバウンドマーケティング | ホームページやブログ、SNSで消費者に向けて情報を発信し、消費者に商品やサービスを購入してもらう手法。 | WEBマーケティング、SEM(検索エンジンマーケティング)、SMM(ソーシャルメディアマーケティング)、コンテンツマーケティング |
ゲリラマーケティング | インパクトのある情報により消費者に見つけてもらう。SNSの急速な浸透により注目されている手法。 | インフルエンサー、バイラル、バズ、炎上商法 |
現在、マーケティング手法は多数存在していますが、大きく分けると、「マス・マーケティング」「ダイレクトマーケティング」「インバウンドマーケティング」「ゲリラマーケティング」の4つに分類できます。
それぞれのマーケティング手法の特徴とそれぞれの分類に属するマーケティング手法を紹介します。
マス・マーケティングとは
マス・マーケティングとはマスメディアを活用したマーケティングのことで、ターゲットを細かく絞らず、不特定多数の消費者を対象に実施するマーケティング手法です。
具体的には、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌といったマスメディアに広告を出すため、消費者一般に対して認知度を高められますが、多額のコストがかかるため、大企業が主な担い手となっています。
以下、マス・マーケティングに分類されるマーケティング手法を紹介しましょう。
①テレビ広告
テレビ番組の合間に放送されるCMの中で、ターゲットに働きかけるマーケティング手法です。
全国規模で発信できるうえ、視覚と聴覚から同時に訴求できるため、印象に残りやすく、情報を伝えやすい点が特徴です。
広告費用が高いうえに、若い人を中心にテレビ離れが進んでいる課題はありますが、テレビ広告を出せば、信頼度が高まり、商品やサービスを選んでもらいやすくなります。
②ラジオ広告
ラジオ番組の合間に放送されるCMの中で、ターゲットに働きかけるマーケティング手法です。
ターゲットにラジオ広告を繰り返し聞かせることによる刷り込み効果が期待できます。
また、エリアを絞った訴求が可能であるため、テレビ広告よりも柔軟な運用ができます。
③新聞広告
新聞の紙面に広告を出して、ターゲットに働きかけるマーケティング手法です。
新聞広告は新聞社の審査を受けて掲載されることから、商品やサービスや提供者の信頼度が高まる効果が期待されます。
また、新聞をよく読むシニア層へのアプローチに最適です。
一方で、若年層を中心に新聞離れが進んでいることや新聞広告の効果測定が難しい点が課題です。
④雑誌広告
雑誌の紙面に広告を出して、ターゲットに働きかけるマーケティング手法です。
新聞広告と同様に、雑誌の掲載には出版社の審査があるため、商品やサービスや提供者の信頼度が高まる効果が期待されます。
雑誌の読者層に合わせた商品やサービスを紹介するのに向いています。
⑤屋外広告
屋外看板や駅看板などで広告を出すことでターゲットに働きかけるマーケティング手法です。
店舗への誘導としても有効ですが、同じ広告を様々な場所に展開することで、反復効果が期待できます。
また、SNSウケする広告を出すことで、ゲリラマーケティングと掛け合わせることもできます。
ダイレクトマーケティングとは
ダイレクトマーケティングとは、商品やサービスの提供者がターゲットに直接コンタクトを取って販促を行うマーケティング手法です。
ターゲットの反応を把握しやすいため、ターゲットに合わせたアプローチ方法を選択できます。
また、ターゲットとの継続的な関係性を築きやすい特徴もあります。
以下、ダイレクトマーケティングに分類されるマーケティング手法を紹介しましょう。
①リアルマーケティング
試供品配布、説明会・セミナーの開催、実演販売などにより、ターゲットに廉価で商品やサービスを試してもらい、反応を確認しながら、新規顧客の開拓を行う手法です。
②テレアポ
ターゲットに直接電話をかけてアプローチするマーケティング手法です。ターゲットに直接話を聞くことができるため、需要の有無を確認できます。
一方で、アポなしで電話をかける場合、クレームになりやすかったり、相手から信用されにくく、逆効果となる恐れもあります。
③ダイレクトメール
ターゲットに直接、商品やサービスを紹介する郵便物を送付することにより、宣伝販促するマーケティング手法です。
インターネットでリサーチしないターゲットに発見してもらう効果が期待できます。一方で、郵便物制作に時間とコストがかかることや、読まれるとは限らない点が課題です。
④メール
ターゲットのメールリストを利用し、メルマガなどを配信する形でアプローチするマーケティング手法です。
低予算でマーケティング施策を講じられる点や、メールの内容をターゲットに合わせてパーソナライズ化しやすい点が優れています。一方で、迷惑メールに分類されてしまったり、埋もれてしまい読まれない可能性があることが課題です。
インバウンドマーケティングとは
インバウンドと言うと観光業界の用語が知られていますが、マーケティング手法としてのインバウンドマーケティングとは、ホームページやブログ、SNSで消費者に向けて情報を発信し、興味を持った消費者に商品やサービスを購入してもらう手法です。
インバウンドマーケティングは、商品やサービスの提供者がターゲットに直接働きかけるわけではなく、消費者側が動く形になります。そのため、受け身のマーケティングと呼ばれています。
ただ、顧客ニーズを分析し、SEOなどの施策を施して、消費者に見つけてもらうことができれば、継続的な成果につながりやすいと言えます。インバウンドマーケティングに分類されるマーケティング手法を見ていきましょう。
①WEBマーケティング
WEBマーケティングとは、商品やサービスの提供者のWEBサイトやECサイトへ消費者の流入を促し、商品やサービスの購入につなげるマーケティング手法のことです。
WEBサイトのアクセシビリティーの改善、オウンドメディアの充実などWEBを通したマーケティング施策のすべてを含みます。
②SEM(検索エンジンマーケティング)
GoogleやYahoo!JAPANなどの検索エンジンを利用したマーケティング手法のことです。SEOやリスティング広告、ディスプレイ広告なども含みます。
③SMM(ソーシャルメディアマーケティング)
YouTube、Twitter、Instagram、TikTokなどのSNSを活用したマーケティング手法のことです。
商品やサービスの提供者が直接情報を発信する場合は、インバウンドマーケティングとして行われますが、インフルエンサーを活用する場合などは、ゲリラマーケティングとして行われます。
④コンテンツマーケティング
商品やサービスそのものを販促するのではなく、ターゲットが求めている価値のある情報を発信することで、潜在顧客を増やし、最終的に商品やサービスの購入につなげるマーケティング手法です。
ゲリラマーケティングとは
ゲリラマーケティングとは、インパクトのある情報を提供することにより注目を浴びて、消費者に見つけてもらい、商品やサービスの購入につなげるマーケティング手法です。
SNSの急速な浸透により、最近、注目されています。以下、ゲリラマーケティングのマーケティング手法を見ていきましょう。
①インフルエンサー
SNSで多くのフォロワーを抱えているインフルエンサーに商品やサービスの情報を配信してもらい、主にインフルエンサーのフォロワーをターゲットに購買意欲を掻き立てるマーケティング手法です。
また、インフルエンサーが発信した情報は拡散されやすいため、注目度が高まりやすい効果が期待できます。一方で、インフルエンサー選びを間違えると炎上してしまうリスクもあります。
②バイラル
バイラルとは、インターネット上での口コミ拡散を狙うマーケティング手法です。
自然に発生する口コミのため、消費者の共感を呼び込みやすく、商品やサービスの信頼性が高まりやすい点が特徴です。一方で、悪い口コミが投稿されて逆効果となるリスクもあります。
③バズ
バズとは、バズるコンテンツを配信することで大きな注目を集めて、その状況を生かして、商品やサービスの購入につなげるマーケティング手法です。
少ない広告費用で、商品やサービスの認知度を高めることができます。一方で、悪い情報として拡散されてしまうと、逆効果となるリスクもあります。
④炎上商法
一般的には炎上はマイナスイメージを持たれますが、あえて、多数の非難を浴びるような言動を行うことで注目を集めて、商品やサービス、その提供者の認知度を高めるマーケティング手法です。
炎上した後で謝罪し、真摯な姿勢を見せて、時間をかけてファンになってもらうことが狙いですが、悪い印象だけが独り歩きしてしまい、制御できない状況になるリスクもあります。
まとめ
マーケティングの手法は、日々進化しています。
テレビ広告のような古典的なマーケティング手法も未だに有効ですが、SNSの急速な浸透により、注目されるようになったゲリラマーケティングの手法も取り入れていくことが大切です。
マーケティング活動は、商品やサービスの販売が軌道に乗ったら終わりではなく、常にPDCAサイクルを回すことが重要です。
終わりがない活動であることを認識し、これからもアンテナを張り巡らして、常に新しいマーケティング手法を取り入れていってください。