インフルエンサーマーケティングとは、主にSNS上で強い影響力を与えるインフルエンサーに自社の商品やサービスを紹介してもらい、認知拡大や売上向上につなげるマーケティング施策を指します。
「期待していた効果がなかなか得られない」
「以前よりも成果が得られなくなってきているのではないだろうか?」
しかし、中にはこのような不安や疑問を持つ方々も多いようです。
そこで当記事では、インフルエンサーマーケティングの実態を理解し、どのような戦略を調整すれば期待できる効果が得られるのか、具体策もご紹介しながら解説します。
インフルエンサーマーケティングは効果が低下してきている!?
SNSが商品やサービス購入の意思決定に及ぼす影響力は計り知れません。
著名人の中には、100万人以上のフォロワー数を持つ「トップインフルエンサー」もいます。
また、ある特定分野に強い影響力を持つ一般の人々の中にも10万人以上のフォロワー数を持つ「ミドルインフルエンサー」は数多くいます。
そのため、インフルエンサーマーケティングは企業にとっても見逃せないマーケティング手法として近年注目を集めてきました。
しかし、期待ばかりが膨らみすぎてしまい「インフルエンサーマーケティングは効果がない」と判断してしまう企業も増えているのが実態です。
なぜ、インフルエンサーマーケティングは失速してしまったのか?
では、なぜインフルエンサーマーケティングが失速してしまったのか、その原因を見ていくことにしましょう。
市場の飽和
特定分野に強い影響力を持つインフルエンサーの数は限られています。
例えば、自社の商品やサービスをAさんというインフルエンサーに紹介してもらおうとアプローチしても、すでに競合他社の商品やサービスを紹介している、といったことも珍しいことではありません。
また、Aさんがこの依頼を引き受けたとしても、Aさんのフォロワーは「企業案件である」ことを察知してしまい、Aさんの人気や信頼性にも悪影響を及ぼすこともあります。
つまり、市場の飽和からインフルエンサーマーケティングが失速しているのです。
インフルエンサーとの不適切なマッチング
魅力的なインフルエンサーにアプローチし自社の商品やサービスの紹介を依頼できたとしても、インフルエンサーとその商品・サービスのブランドがマッチしていない場合、フォロワーが興味関心を示すことはなく、結果的に効果が得られなくなってしまいます。
自社にとって適切なインフルエンサーを選び、商品やサービスに適したターゲット層に訴求できることが重要です。
コンテンツの質の低下
インフルエンサーマーケティングは、あくまでインフルエンサーが自然な形で商品やサービスを紹介し、平等にジャッジすることが大切です。
しかし企業によるPR案件のため、例えば、以下のようにコンテンツの質が低下してくると、期待される効果は得られなくなります。
- その商品・サービスの良いところばかり紹介されている
- これまで紹介された商品やサービスとは、ターゲット層や嗜好性などが明らかに異なり、フォロワーが異質と感じる
インフルエンサーマーケティングを成功させるためには?
自社にとって最適なインフルエンサーを選ぶ
インフルエンサーマーケティングを成功させるためには自社にとって最適なインフルエンサーを選ぶことが必要不可欠です。ここからはそのための参考基準について解説していきます。
フォロワー数を参考にする
アカウントのフォロワー数が多ければ多いほど、見ている人が多くなるといえます。
そして、そのインフルエンサーに自社の商品・サービスを紹介してもらうことができれば、認知拡大や売上向上も期待できるでしょう。
ただし注意点として、フォロワー数の多さは単なる見ている人の多さであって、そのインフルエンサーにPRを依頼できたとしても、必ずしも効果的な反応が得られるわけではないことを認識しておきましょう。
エンゲージメント率を参考にする
フォロワーがそのインフルエンサーの投稿にどのくらい反応しているかを指し示す割合を「エンゲージメント率」と呼びます。
エンゲージメント率は以下の計算式で表わすことができます。
- 平均いいね/フォロワー数
- 平均コメント数/フォロワー数
すべての投稿数の平均では集計が膨大になることもあるため、直近の3投稿か5投稿で計算されるのが一般的です。
ただし注意点として、エンゲージメント率が高いのはこのインフルエンサーの何気ない日常の投稿だけかもしれません。
また、すでに流行していることや人気のアイドルに関することなどもエンゲージメント率だけを見れば高い数値になるかもしれません。
このようなインフルエンサーに依頼しても、必ずしも自社の商品やサービスを紹介する投稿でエンゲージメント率が上がるとは限らないことを認識しておきましょう。
インフルエンサーの投稿内容や価値観を参考にする
上記のように、フォロワー数やエンゲージメント率といった指標ではなく、そのインフルエンサーがどのような内容の投稿を行なっているのか、どんな価値観を持っている人物なのかを調べて、自社の商品・サービスの紹介を依頼する、という方法です。
客観的な数値や指標によってインフルエンサーを決めるわけではありませんが、自社の商品やサービスに、そのインフルエンサーの雰囲気は合っているのか?自社ブランドとそのインフルエンサーの価値観はあっているのか?など、直感で決定することも重要です。
顧客の囲い込みを図る
インフルエンサーマーケティングの最大の目的は顧客獲得です。
インフルエンサーによる自社商品・サービスの紹介に反応したフォロワーは、潜在顧客といえます。
この潜在顧客を新規顧客化し、リピーターになってもらうためには割引や送料無料、次回からも使える特典などを準備する必要があります。
また、自社商品・サービスを紹介してくれたインフルエンサーは確実に興味を持ってくれているため、インフルエンサー自身を顧客化し、リピーターにすることもとても重要です。
インフルエンサーもフォロワー同様、顧客化のための特典を用意しておくとよいでしょう。
投稿から購入ページまでのステップを減らす
投稿から購入ページまではいくつかの段階がありますが、その段階ごとに潜在顧客は少しずつ離脱してしまいます。つまり、投稿から購入ページまでの段階をいかに減らすかが重要であるといえます。
そのためには、以下のような施策が必要になります。
- SNSアカウントのプロフィールに購入ページのURLを記載する
- 潜在顧客がインフルエンサーの投稿に興味を示し、「使ってみたい」「購入したい」と思ったときにメンションや写真でのタグ付けから、すぐに自社のSNSアカウントに誘導できる
インフルエンサーマーケティングツールを活用する
インフルエンサーマーケティングツールを活用すると以下のことが実現でき、効率よく進めることができます。
- 自社にとって最適なインフルエンサーを自動的に探し出すことができる
- SNSの投稿内容を管理することができる
- データをエクスポートすることができる
- 他の分析ツールと連携することができる
また、主なインフルエンサーマーケティングツールとして主に以下のものが挙げられます。
インフルエンサーマーケティングの成功事例
リップモンスター/花王株式会社
主に10〜20代女性の認知拡大を図るために、インフルエンサーを活用した成功事例です。リップモンスターは発売前から口コミ施策やYouTubeでの施策を展開し、商品に対する期待感醸成に努めました。
リップモンスターの発売キャンペーンでは、「Spark Ads」と呼ばれるクリエイターの縦型動画が多くのユーザーから注目され、口コミが急速に拡散されました。
リップモンスターは、縦型動画とインフルエンサーマーケティングの組み合わせにより成功した事例で、ターゲット層に魅力的なアプローチが実現できました。
コンソメ/味の素株式会社
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、各世帯で自炊する機会が増えたことにより、味の素株式会社はコンソメの使用率アップを目標に、若年層や主婦層をターゲットにしたインフルエンサーマーケティングを強化しました。
料理研究家などのインフルエンサーを起用し、InstagramやYouTubeでの投稿を通じて、コンソメの使用機会を増やすことに成功しました。
また、「クラシルショート イベントタイアップ」などを行い、新しいコンソメレシピの開拓を行い、コンソメの使用機会拡大を図りました。
こうした戦略により、味の素株式会社はコンソメの使用率アップを目標にしたインフルエンサーマーケティングを成功させ、主婦層ばかりでなく若年層の購入量や購入率増加を実現させました。
ファッションセンターしまむら/株式会社しまむら
しまむらでは、ターゲット層に適したインフルエンサーを選ぶことを重要視しています。
プチプラファッションに詳しいインフルエンサーとタッグを組み、しまむらのオリジナルブランドである「dearful」の商品を販売しました。
しまむらとコラボしたインフルエンサーは、Instagramのフォロワー数が46万人(2024年1月時点)おり、ファッションに興味を持つ女性の若年層に大変人気があります。
そのため、しまむらのコアターゲットである20~30代の女性にアプローチするのにとても適したインフルエンサーとなり、こちらも見事に成功を収めました。
インフルエンサーマーケティングの将来性
インフルエンサーマーケティングの需要や市場規模は、今後も拡大成長する可能性が高いといえます。以下がその理由となります。
コロナ禍でも成長
数年間続いたコロナ禍では、様々な分野で市場が停滞してしまいました。
しかし、コロナ禍では自宅で過ごす時間が増えインフルエンサーマーケティングの需要や市場規模は、停滞どころか順調に拡大しました。
多くの市場がネガティブな影響を受けた中で成長した市場が、今後数年間で停滞、下降するとは考えにくいといえます。
認知されてからまだ日が浅い
インフルエンサーマーケティングが日本で認知され始めたのは約15年ほど前からであり、まだ日が浅いといえます。そのため、今後も発展する可能性は高いといえるのです。
参考:【2024年版】インフルエンサーマーケティングの市場規模と2027年までの見通し
今後のインフルエンサーマーケティングのポイント
マイクロインフルエンサーに注目する
インフルエンサーはフォロワー数が多いとリーチ力は期待できますが、エンゲージメント率が比例して高くなるとはいいきれません。
しかし、フォロワー数が3万人未満とリーチ力は低いものの、エンゲージメント率が高いのが「マイクロインフルエンサー」であり、今後はこうしたインフルエンサーに注目です。
投稿内容を重視する
どんなにフォロワー数が多くても、投稿内容の質が低いものや自社商品・サービスのイメージに合っていない場合は効果が期待できません。
投稿内容をよく研究しインフルエンサーを選択することがカギになります。
リスク管理を徹底する
インフルエンサーマーケティングを行なう上で注意したいのがステルスマーケティング対策です。
SNS上で炎上してしまえば、金銭的な損害ばかりでなく、自社の信頼性低下につながってしまう恐れがあります。
そのため、「♯広告」などのハッシュタグを付けたり、コメントに「コラボ企画」など明記するようにしましょう。
プラットフォームを研究する
様々なSNSのプラットフォームでは、頻繁にアップデートが行われています。
参入に遅れてしまうと機会損失につながることも多いため、日頃からプラットフォームのアップデートを見逃さず、研究するようにしましょう。
まとめ
インフルエンサーマーケティングは市場の飽和やインフルエンサーとの不適切なマッチング、コンテンツの魅力や質の低下などに伴い、勢いが失速してきているともいえます。
しかし、コロナ禍で他の多くの市場が停滞する中、順調に需要や市場規模が拡大していることや認知されてまだ日が浅いことなどから、今後も成長は続くでしょう。
持続可能な戦略として、インフルエンサーを選ぶ際は「マイクロインフルエンサー」に注目し、投稿内容が自社商品やサービスに適しているかよく調べましょう。
また、ステマ予防としてリスク管理を徹底することや、アップデートを繰り返すプラットフォームを日頃からよく研究していることが重要になります。