健康経営がもたらすメリットとは?生産性向上のコツと中小企業が実施すべき理由

近年、健康経営という言葉が注目されています。健康経営とは、従業員の健康増進と企業の業績向上を両立させる経営理念と実践を指します。

しかし、中小企業にとって、健康経営は漠然としたイメージを持ち、具体的なメリットや導入方法がわからないという声も多く聞かれます。

本記事では、健康経営エキスパートアドバイザーとして、中小企業が健康経営を導入すべき理由について、そのメリットや生産性向上への効果、具体的な取り組み方などを詳しく解説します。

また、中小企業ならではの課題や解決策についても触れ、自社に合った健康経営の実現に向けて一歩踏み出すためのヒントを提供します。

目次

健康経営とは?なぜ重要なのか

健康経営は、単に従業員の健康状態を改善することではありません。

健康増進を経営戦略に組み込むことで、従業員のモチベーション向上、生産性向上、離職率低下、医療費削減など、企業全体に多くのメリットをもたらします。

健康経営の目的

健康経営の目的は、以下の3つに集約されます。

従業員の健康増進と疾病予防
健康的な生活習慣の促進、定期的な健康診断の実施、ストレスマネジメント研修などを通して、従業員の健康状態を改善し、疾病の予防に努めます。

従業員の働きがいと活力の向上
健康的な心身の状態は、仕事への集中力や創造性を高め、モチベーションを向上させます。

企業の業績向上
従業員の健康状態が良好であれば、欠勤やプレゼンティーイズム(出勤はしているものの本来のパフォーマンスを発揮できていない状態)の減少につながり、企業全体の生産性向上に貢献します。

健康経営がもたらす5つのメリット

健康経営を導入することで、中小企業は以下の5つのメリットを得ることができます。

  • 労働生産性の向上
  • 従業員の満足度と健康の改善
  • 採用競争力の向上
  • ブランドイメージの強化
  • 医療費の削減

労働生産性の向上

健康的な従業員は、集中力や作業効率が高く、長時間労働に耐えられるため、結果的に労働生産性が向上します。

健康経営に取り組む企業は、取組んでいない企業と比較して、労働生産性が高いという調査結果もあります。

健康経営と労働生産性の関係

  • 健康的な従業員は、集中力や作業効率が高いため、短時間でより多くの仕事をこなすことができます。
  • 疲労やストレスを感じにくいため、長時間労働に耐えられる可能性が高いです。
  • 病気による欠勤が少なく、安定的に業務を遂行することができます。

従業員の満足度と健康の改善

健康経営に取り組む企業は、従業員の健康状態や生活習慣の改善に積極的に取り組むため、従業員の満足度向上につながります。

また、健康的な生活習慣は、ストレスの軽減や病気の予防にも効果があり、従業員の心身の健康状態を改善することができます。

健康経営と従業員満足度・健康の関係

  • 健康的な職場環境や健康増進プログラムの提供は、従業員の満足度向上に貢献します。
  • 従業員の健康状態や生活習慣について定期的に把握し、必要なサポートを提供することで、従業員の心身の健康を守ることができます。
  • 健康に関する意識の高い企業であることは、優秀な人材の獲得にも有利に働きます。

採用競争力の向上

近年、求職者はワークライフバランスや企業の福利厚生制度などを重視する傾向があります。

健康経営に取り組んでいる企業は、従業員の健康を意識した経営を行っている企業として評価され、優秀な人材の獲得競争において有利に立つことができます。

健康経営と採用競争力

  • 健康的な職場環境や充実した福利厚生制度は、求職者にとって魅力的な条件となります。
  • 健康経営に取り組んでいる企業は、企業理念や価値観に共感する人材を獲得しやすくなります。
  • 従業員の定着率向上にもつながり、長期的な視点での人材育成が可能になります。

ブランドイメージの強化

健康経営に取り組んでいる企業は、社会貢献度の高い企業として評価され、企業イメージの向上につながります。

また、従業員や顧客、取引先からの信頼も高まり、企業活動全般にプラスの影響を与えることができます。

健康経営とブランドイメージ

  • 健康経営は、企業の社会的責任を果たすための取り組みとして評価されます。
  • 従業員の健康を意識した経営を行っている企業は、誠実で倫理的な企業であるというイメージを顧客や取引先、地域社会に与えることができます。

医療費の削減

従業員の健康状態が良好であれば、生活習慣病などの疾患リスクが減少し、医療費の削減につながります。

健康経営に取り組む企業は、取り組んでいない企業と比較し、医療費が低いという調査結果もあります。

健康経営と医療費の関係

  • 生活習慣病などの疾患リスクが減ることで、医療費の削減につながります。
  • 従業員の健康状態を把握し、適切な医療機関への受診を促すことで、病状の早期発見・早期治療が可能になります。
  • 予防医療への積極的な取り組みは、長期的な医療費削減にも効果があります。

中小企業が健康経営を導入すべき理由

中小企業は、大企業と比較して限られたリソースの中で経営を運営しているため、健康経営の導入に二の足を踏むことも多いかもしれません。

しかし、中小企業こそ健康経営のメリットを最大限に享受できる可能性があります。

中小企業における健康経営のメリット

従業員との距離が近く、きめ細やかなサポートが可能
大企業と比べて、従業員との距離が近い中小企業は、一人ひとりの健康状態やニーズに合わせたきめ細やかなサポートを提供することができます。

導入コストが比較的低い
大企業と比べて、中小企業は導入コストを抑えることができます。健康経営は、特別な設備やプログラムを導入する必要はなく、小規模な取り組みから始めることも可能です。

経営者や人事担当者が率先して取り組むことができる
大企業のように分業化が進んでいるわけではなく、経営者や人事担当者が率先して健康経営に取り組むことができるため、迅速な意思決定と実行が可能になります。

従業員のモチベーション向上効果が高い
中小企業の規模であれば、従業員の貢献度がより直接的に実感できるため、健康経営への取り組みを通して従業員のモチベーション向上効果が期待できます。

中小企業向けの健康経営の具体的な取り組み方

中小企業が健康経営を導入する際には、以下の点に留意することが重要です。

自社の状況に合った取り組みを選択する

中小企業といっても、業種や規模、従業員数などによって状況は様々です。まずは、自社の状況を把握し、無理なく取り組める健康経営プログラムを選択することが重要です。

中小企業向けの健康経営プログラム例

  • 健康診断の実施:定期的な健康診断を実施し、従業員の健康状態を把握します。
  • 禁煙・減煙サポート:禁煙・減煙を希望する従業員に対して、カウンセリングや禁煙補助金の支給などのサポートを提供します。
  • 運動習慣の促進:ウォーキングやヨガなどの運動プログラムを提供したり、社内運動会を開催したりして、従業員の運動習慣を促進します。
  • ストレスマネジメント研修:ストレスマネジメントに関する研修を実施し、従業員がストレスを上手に解消できるようサポートします。
  • 健康的な食事の提供:社員食堂で健康的なメニューを提供したり、食育に関するセミナーを開催したりします。

経営層と従業員が一体となって取り組む

健康経営は、経営層の一存でできるものではありません。従業員一人ひとりが健康意識を持ち、積極的に取り組むことが重要です。

経営層と従業員が一体となって、健康経営を推進していくことが成功の鍵となります。

経営層と従業員が一体となるためのポイント

  • 経営層は、健康経営へのコミットメントを明確に示し、率先して取り組む姿勢を示す必要があります。
  • 従業員は、健康経営に関する情報共有や意見交換の場を設け、積極的に参加を促します。
  • 健康経営に関する目標を設定し、定期的に進捗状況を評価し、必要に応じて改善策を講じます。

外部機関の支援を活用する

健康経営には、専門的な知識やノウハウが必要となります。中小企業の場合は、自治体や健康保険組合などの外部機関の支援を活用することをおすすめします。

外部機関の支援例

  • 健康経営に関する講演会やセミナーの開催
  • 健康経営の個別相談
  • 健康経営優良法人認定の支援

中小企業における健康経営の課題と解決策

中小企業が健康経営を導入する際には、以下の課題に直面することがあります。

人手不足
限られた人員の中で、健康経営の推進に十分な時間を割くことが難しい。

専門知識やノウハウの不足
健康経営に関する専門的な知識やノウハウがない。

予算不足
健康経営の取り組みには、費用がかかる。

これらの課題を解決するためには、以下の対策が有効です。

  • 外部機関の支援を活用する:自治体や健康保険組合などの外部機関の支援を活用することで、人手不足や専門知識・ノウハウの不足を補うことができます。
  • 小規模な取り組みから始める:最初から大規模な取り組みを行うのではなく、小規模な取り組みから始めて、徐々に規模を拡大していく。
  • 従業員の積極的な参加を促す:健康経営は、経営層の一存でできるものではありません。従業員一人ひとりが健康意識を持ち、積極的に取り組むことが重要です。経営層と従業員が一体となって、健康経営を推進していくことが成功の鍵となります。

中小企業がマネしやすい健康経営の成功事例

大企業の事例が主ですが、経済産業省の「2023 健康経営 先進企業事例集」より特徴的な事例を紹介します。

以下に紹介する事例以外にも簡単にマネができる事例が多数紹介されているため、健康経営の取り組みに参考にされてみることをおすすめします。

●参考・情報引用「2023 健康経営 先進企業事例集(経済産業省)」

事例1:オムロンヘルスケア株式会社

京都府に本社を置く、大手電機メーカーのオムロンヘルスケアでは、世界中に健康を届ける企業として、従業員が健康で元気でいきいきと働くことができる企業であることを目的に「オムロングループ健康宣言」に基づき健康経営の実践に取り組んでいます。

健康機器を扱うメーカーらしく自社製品等を活用した健康経営の取り組みが多くあります。

そんな中でも多くの企業がマネできる取り組みとして「従業員の喫煙率低下」の取り組みが挙げられます。

取組内容・卒煙セミナーの実施・ポスター、メルマガの掲示・配信・保健師がOne to Oneでサポート※卒煙支援としてチーム制卒煙チャレンジの実施(宣言→サポート→達成時インセンティブ)
評価・成果・17年度:17.9% ・18年度:16.3% ・19年度:12.9%・20年度:10.4% ・21年度:8.9% ・22年度:6.4%

事例2:西川株式会社

様々な寝具の製造・販売をしている寝具メーカーの西川では、様々な健康経営の取り組みが行われていますが、その中でも寝具メーカーらしい取り組みが「仮眠ルーム」を設ける取り組みです。

取組内容・予約制の仮眠ルームを設置(仮眠推奨タイム12:00~15:00)・女性専用ルームを完備・コアタイム以外はライブラリーとして活用・集中力を高めたいときに活用奨励
評価・成果・従業員の90%が導入前と比べ「ストレス」や「眠気の解消」につながった。・作業効率や集中力といった生産性の向上だけでなく、仮眠文化を根付かせることで、疲労の回復や心身のリラクゼーション効果、ストレス軽減を図り、快適な働き方のルーティンとなっている

事例3:三菱地所株式会社

不動産開発・運営を行っている三菱地所では、「カラダ改善コンテスト」と称し、社内でチームを組んで2カ月間の①筋肉量の増、②脂肪量の減、③歩数をポイント化し競う取り組みが行われています。

取組内容・社内で5人のチームをつくってもらい2カ月間の①筋肉量の増、②脂肪量の減、③歩数をポイント化し競う
評価・成果・社員の5人に1人が参加するイベントとなっており、参加者の半数以上が数値を改善している。・歩数はタイムリーに順位を確認できるようになっているため、日々の健康への意識づけやチーム内のコミュニケーション活性化にもつながっている

まとめ

健康経営は、中小企業にとっても大きなメリットをもたらす経営戦略です。限られたリソースの中で最大限の効果を得るためには、自社の状況に合った取り組みを選択し、経営層と従業員が一体となって取り組むことが重要です。

紹介した事例も参考に先ずは簡単な事から取り組んでみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

中小企業診断士として補助金に関する計画書の作成支援等を得意としている。また、ITコーディネータ、健康経営エキスパートアドバイザーなど様々な資格を有しており、様々な角度からのコンサルティングも実施している。IT分野では特にSNSコンサルティングが得意。カウンセラーとして側面もあり、カウンセリングの聴く技術も活かしてクライアントの望む姿を明確にし、具体的な行動に移せるコンサルティングを行っている。

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