【中小企業診断士が解説】事業再構築補助金の概要|公募要領〜申請条件の解説

目次

事業再構築補助金とは?

事業再構築補助金は、新型コロナウイルスの影響を受けた中小企業が新たな事業展開を図るために設けられた補助金制度です。

アフターコロナの社会情勢に変わりつつある中、事業再構築補助金も形を変えながら継続されています。

この補助金は、事業の再構築や新規事業への進出を促進し、企業の成長を支援することを目的としています。

事業再構築の定義とは?

事業再構築補助金は、事業再構築の定義に合致した事業を計画する必要があります。

事業再構築の定義には複数の類型がありますが、類型に該当しない事業は対象外となるため事前にしっかりと確認をしておくことが大切です。

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再構築の類型要件
新市場進出(新分野展開、業態転換)新たな製品・商品・サービスを提供すること
新たな市場に進出すること
新事業の売上高が総売上比率の10%以上になること
事業転換新たな製品・商品・サービスを提供すること
新たな市場に進出すること
主要な業務が細から中分類レベルで変わること
業種転換新たな製品・商品・サービスを提供すること
新たな市場に進出すること
主要な業務が大分類レベルで変わること
事業再編会社法上の組織再編行為(合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)等を補助事業開始後に行い、新たな事業形態のもとに、新市場進出(新分野展開、業態転換)、事業転換、業種転換のいずれかを行うこと
国内回帰海外で製造等をする製品について、その製造方法が先進性を有する国内拠点を整備することをいう
地域サプライチェーン維持・強靭化地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠であり、その供給に不足が生じ、又は、生ずるおそれのある製品について、その製造方法が先進性を有する国内生産拠点を整備すること

要件は全てを満たしている必要があり、内容も複雑です。申請を検討される際は要綱を事前に読み込み、不明な点は事務局に問い合わせ不明点を解消しておくことをおすすめします。

また、再構築補助金の要領は公募回によって大きく変わってきた経緯もあるため最新の情報を確認してください。

事業再構築補助金の概要

事業再構築補助金には、いくつかの申請枠が設けられており、それぞれ補助率や補助金額が異なります。以下に申請枠の種類と概要を紹介します。

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申請枠概要
成長分野進出枠(通常類型)ポストコロナに対応した、成長分野への大胆な事業再構築にこれから取り組む事業者や、国内市場縮小等の構造的な課題に直面している業種・業態の事業者が取り組む事業再構築を支援。
成長分野進出枠(GX進出類型)ポストコロナに対応した、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組をこれから行う事業者の事業再構築を支援。
コロナ回復加速化枠(通常類型)今なおコロナの影響を受け、コロナで抱えた債務の借り換えを行っている事業者や、事業再生に取り組む事業者の事業再構築を支援。
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)コロナ禍が終息した今、最低賃金引上げの影響を大きく受ける事業者の事業再構築を支援。

上記の申請枠に加え、サプライチェーン強靭化枠が設けられています。サプライチェーン強靭化枠は対象経費等が一部、異なっています。

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申請枠概要
サプライチェーン強靭化枠ポストコロナの経済社会において、海外で製造等する製品の国内回帰や地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠な製品の生産により、国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に資する取組を行う中小企業等に対する支援

事業再構築補助金の申請枠と補助率・補助金額

補助上限金額や補助率は従業員数や企業規模等で決まります。以下に申請枠ごとの概要を記載します。

再構築補助金の補助金額や補助率は、従業員数の他に一定の要件を満たすと補助上限や補助率が上がるなど非常に複雑です。

申請の際には、要綱の確認や専門家への相談をおすすめします。

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申請枠補助金額補助率
成長分野進出枠(通常類型)【従業員数20人以下】100万円~1,500万円(2,000万円)
【従業員数21~50人】100万円~3,000万円(4,000万円)
【従業員数51~100人】100万円~4,000万円(5,000万円)
【従業員数101人以上】100万円~6,000万円(7,000万円)
中小企業者等1/2(2/3)
中堅企業等 1/3(1/2)
成長分野進出枠(GX進出類型)中小企業者等
【従業員数20人以下】100万円~3,000万円(4,000万円)
【従業員数21~50人】100万円~5,000万円(6,000万円)
【従業員数51~100人】100万円~7,000万円(8,000万円)
【従業員数101人以上】100万円~8,000万円(1億円)中堅企業等100万円~1億円(1.5億円)
中小企業者等1/2(2/3)
中堅企業等1/3(1/2)
コロナ回復加速化枠(通常類型)【従業員数5人以下】100万円~1,000万円
【従業員数6~20人】100万円~1,500万円
【従業員数21~50人】100万円~2,000万円
【従業員51人以上】100万円~3,000万円
※1()内は短期に大規模な賃上げを行う場合※2廃業を伴う場合には、廃業費を最大2,000万円上乗せ
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)【従業員数5人以下】100万円~500万円
【従業員数6~20人】100万円~1,000万円
【従業員数21人以上】100万円~1,500万円
中小企業者等3/4(※一部2/3)中堅企業等2/3(※一部1/2)
申請枠補助金額補助率
サプライチェーン強靭化枠)1,000万円~5億円中小企業者等1/2中堅企業等1/3

また、再構築補助金では、補助金額について上限額だけでなく下限額が設けられている点にも注意してください。

下限額については、下限額100万円で補助率1/2の場合では、最低でも200万円以上の経費支出が必要です。

事業再構築補助金の基本要件

事業再構築補助金を申請するためには、以下の要件を全て満たす必要があります。

  1. 「事業再構築」の定義に該当する事業であること。
  2. 事業計画書を金融機関等(銀行、信金、ファンド等)や認定経営革新等支援機関と策定し、確認を受けていること。
  3. 補助事業終了後3~5年で付加価値を年平均3.0%~5.0%以上増加させること。又は、従業員一人当たり付加価値額を年平均成長率3.0%~5.0%以上増加させること。

これらの要件を満たすことができれば、事業再構築補助金の申請が可能となります。特に、事業計画の策定においては、専門家の助言を受けることが重要です。

申請から審査の流れと注意点

事業再構築補助金の申請から審査までの流れは以下の通りです。

STEP
事前準備
  • 公募要領確認:公募要領をよく確認し、自社の事業が申請条件を満たしていることを確認します。
  • GビズIDプライムの取得:電子申請用のGビズIDプライム(https://gbiz-id.go.jp/top/ )を取得します。GビズIDにはエントリーとプライムの2種類がありますが、申請にはプライムが必要なため、ID取得時には注意が必要です。また、IDの発行には場合によっては1週間以上かかることもあるため、早めの取得をおすすめします。
  • 計画書の作成:補助金申請の計画書を作成します。計画書はA4サイズ10枚以内が目安となっています。計画書は、事業再構築の審査項目に沿って作成することが採択のためには重要です。
  • 必要書類の準備:必要書類を準備します。必要な書類については事業形態や申請枠、加点項目の活用等により異なるため、要綱を確認し事前に準備を進めておくことをおすすめします。
STEP
電子申請

GビズIDプライムを使用し、電子申請を行います。電子申請システムは入力箇所も多く時間がかかります。加えて、電子申請システムの申請締切時間は明確に定めれており、時間を過ぎると申請ができなくなってしまいます。そのため、締切ギリギリで申請の作業をしなくても良いように早めの申請作業がおすすめです。

STEP
審査

申請締め切り後から審査が開始されます。審査は中小企業診断士等の外部有識者により行われ2~3カ月程度かかります。審査結果発表の目安は公募要領等で記載されています。計画書に記載した事業は、原則、交付決定以降のみ認められており、交付決定前に着手してしまうと採択されたとしても補助対象外になってしまうため注意が必要です。

STEP
採択決定・交付申請

採択・不採択の発表はGビズIDプライムアカウントに対応するメールアドレスに届きます。また、採択者については、事業再構築補助金のホームページ上に公表されます。

事業再構築補助金は採択の後に、交付申請の手続きがあり、交付申請の手続きが完了し、交付決定通知が届いた後から補助事業を開始できます。

採択されただけでは、補助事業は開始できず、交付決定前に補助事業に着手してしまった場合も、補助対象外になってしまうため注意しましょう。

STEP
交付決定

交付申請では、補助対象経費として申請した設備等の見積もりなど各種書類を整え申請します。交付申請で提出した書類等の確認が完了すると交付決定となります。

書類の不備等があると交付決定までに時間がかかる場合もあるため、交付申請の際も必要書類や注意事項等をしっかりと確認し行う必要があります。

STEP
事業実施

交付決定後から申請の際の計画書に基づいて補助事業を実施します。補助事業の実施期間も定められています。実施期間を過ぎてしまうと対象外になってしまうため、事業実施期間をしっかりと確認し、事業を実施しましょう。補助事業の完了は、対象経費の支払いが全て完了することが必要です。

STEP
実績報告

補助事業の終了後には期限内に実績報告の提出が必要です。実績報告の際には、見積書や支払いの証拠など、補助事業を実施した際の取引の様子がわかる証拠書類等の提出が必要となります。

証拠書類が不足していると、対象経費から外されてしまう可能性もあるため、事業の実施前に実績報告に必要な書類も確認しておきましょう。

事業再構築補助金の審査のポイント

事業再構築補助金の審査では、以下のポイントで採点審査が行われます。申請枠による審査項目や加点項目などもありますが、ここでは基本的な審査のポイントの概要を簡単に紹介します。

以下のポイントを全て満たしている必要はありませんが、採点審査のためより多くのポイントを満たすことで採択の確率は上がります。

  • 補助事業の適格性
  • 事業の有望度
  • 事業の実現可能性
  • 公的補助の必要性
  • 政策点

補助事業の適格性

  • 先に説明した「事業再構築補助金の基本要件」を満たす事業であるか
  • 補助事業終了後3~5年で付加価値総額を年率平均3.0~5.0%以上の増加等を達成する取り組みであるか

事業の有望度

  • 補助事業が自社のアプローチの範囲内で継続的に売上・利益を確保できる規模があるか。
  • 補助事業の対象となる市場は、成長が見込める市場であるか
  • 補助事業で取り組む新規事業が自社にとって参入可能な事業であるか
  • 競合を分析したうえで、顧客ニーズを基に、競合に対して優位性が確立できる差別化が可能か

事業の実現可能性

  • 事業化に向けて中長期的な補助事業の課題を検証できているか
  • 事業化にいたるまでの遂行方法やスケジュールは適切であるか
  • 最近の財務状況から補助事業を遂行できると期待できるか
  • 補助事業を実施できる体制は整っているか

公的補助の必要性

  • 経済的波及効果が大きい事業や社会インフラを担う事業、新たな雇用を生み出す事業であるか
  • 補助事業として費用対効果が高い事業であるか
  • 先端的なデジタル技術の活用、新たなビジネスモデルで地域やサプライチェーンのイノベーションに貢献できるか
  • 補助事業がポストコロナ時代の感染症等の危機に強いじぎょうであるか
  • 国からの補助がなくとも自社単独で容易に実施できる事業ではないか

政策点

  • ポストコロナ時代の社会的な変化に伴い、生産性向上が見込まれる分野に事業再構築することで日本経済の構造転換を促すことができるか
  • 先端的なデジタル活用や低炭素技術の活用等の経済社会に重要な技術で経済成長を牽引できるか
  • 新型コロナが事業環境に与えた影響を乗り越えV字回復達成するために必要な投資であるか
  • ニッチ分野において差別化を行うことでグローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか
  • 地域の特性を活かし高い付加価値を創出し、地域への波及効果や雇用創出等の経済成長を牽引する事業であることを期待できるか

申請を成功させるための計画書作成のポイント

申請を成功させるためには、事業計画書の作成が非常に重要です。上の審査のポイントに加えて、以下のポイントも押さえておきましょう。

  • 具体的かつ明確な目標設定:事業の目標を具体的に設定します。数値目標を含めることで、計画の実現可能性を示します。
  • 詳細なマーケティング分析:市場分析や競合分析を行い、戦略を練ります。市場環境や顧客ニーズに基づいた計画が評価されます。
  • 明確な収益計画:予測売上やコスト計画を具体的に示します。収益見込みが現実的であることが重要です。
  • 実行スケジュールの明確化:事業の実施スケジュールを具体的に記載します。スケジュールが現実的で、計画の実現可能性が高いことを示します。

よくある質問

ここでは、事業再構築補助金に関するよくある質問とその回答を紹介します。

申請書はどのように書けば良いですか?

申請書は、事業の概要、目標、戦略、収益計画を詳細に記載します。具体例や数値データを用いることで、計画の実現可能性を示します。また、事業の革新性や収益性、実行可能性を強調することが重要です。

必要な書類は何ですか?

必要な書類は、法人・個人事業、申請枠などにより異なります。最新の公募要領を確認し、必要書類を漏れなく準備しましょう。また、書類の不備がないよう、十分に確認してください。

申請締切はいつですか?

申請締切は公募ごとに異なりますので、最新の公募要領やスケジュールを確認することが重要です。締切間近になると申請が集中し、システムが混雑する可能性があるため、早めの準備と申請を心掛けましょう。

採択後の手続きはどうなりますか?

採択後には、補助金の交付申請を行います。交付決定通知を受けった後に事業を実施し、実績報告を行います。実績報告が承認されると、補助金の支払いが行われます。事業の進捗状況を適切に報告し、計画通りに事業を進めることが求められます。

採択後の交付申請は場合によっては期間を要する場合があるため、採択後すぐに補助事業に着手ができない可能性があることに注意が必要です。

不採択の場合の対応は?

不採択となった場合は、審査結果を踏まえて再度申請を行うことができます。事務局に審査のフィードバックを求めることができるため、フィードバックを参考にし、計画を見直すことで、次回の採択率を高めることが可能です。

まとめ

この記事では、事業再構築補助金の概要、公募要領、申請条件、審査のポイントについて解説しました。事業再構築補助金は、中小企業が新たな挑戦を行い、事業の成長を実現するための強力なサポートとなる制度です。

一方で、新しい事業への進出を求めれる補助金制度でもあり、採択後からが本当に大変な補助金ともいえます。

そのため、安易に申請をせずに既存の事業を含め成長できる計画をより慎重に練り、申請されることをおすすめします。


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この記事を書いた人

中小企業診断士として補助金に関する計画書の作成支援等を得意としている。また、ITコーディネータ、健康経営エキスパートアドバイザーなど様々な資格を有しており、様々な角度からのコンサルティングも実施している。IT分野では特にSNSコンサルティングが得意。カウンセラーとして側面もあり、カウンセリングの聴く技術も活かしてクライアントの望む姿を明確にし、具体的な行動に移せるコンサルティングを行っている。

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